アニメ評論家・藤津亮太が「鋼の錬金術師」の魅力を語る!「朴璐美さん、釘宮理恵さんの名キャスティングが光ります」

アニメ化、実写映画化されるなど大ヒットした荒川弘原作のコミック「鋼の錬金術師」。5月と6月には、実写映画の完結編が二部作連続公開予定だ。そんな「鋼の錬金術師」の魅力について、アニメ評論家の藤津亮太さんに聞いた。

アニメ評論家の藤津亮太
アニメ評論家の藤津亮太

■少年漫画には珍しい文学的要素も

母親を亡くした兄弟が、禁忌である死者を蘇らせる錬金術を試み失敗。兄のエドは片腕と片足を、弟のアルは全身を失い、自身の体を取り戻すため「賢者の石」を求めて旅をする「鋼の錬金術師」。ダークな設定だが「それに負けないキャスティングがアニメのヒットに繋がった」と藤津さんは分析する。

「絶望的な状況ですが、主人公サイドの人物は明るく前向きな意思の強さがある。エド役の朴璐美さんは、やんちゃな言葉遣いも多いですが、頼れる安心感のある声。アル役の釘宮理恵さんはかわいい女性キャラの声のイメージですが、制作関係者が少年役もイケるはずと割り当て、これがハマりました」
 
舞台はSLが走るぐらいの文明がある世界。国が錬金術を管理する中で、エドとアルは"世界"の在り方に向き合わざるを得なくなっていく。その過程では少年向けにはあるまじき、ダークなストーリー展開も。

「2003年放送版第7話の『合成獣(キメラ)が哭(な)く夜』で、悲惨な事件が起きます。原作にもあるエピソードで、テレビ放映のためにスタッフが抑えた表現をしようとしたのですが、局のプロデューサーが『もう少しやってもいい』と判断し、ハードな表現が可能に。原作の持っているテーマや死生観をアニメで正面から描くことができたのです。また、本作は自分たちが間違って執り行った失敗を取り戻す物語。少年漫画の多くは悪を倒したり、やられてやり返す展開が多い中、同作のベクトルは自省や内省に向かっている。文学的要素もあり、ゆえに作品が深みを増したのだと考えます」
 
2003年放送版ではポルノグラフィティの「メリッサ」、ASIAN KUNG―FU GENERATIONの「リライト」など、主題歌もヒットした。

「主題歌のタイアップには、ある程度売れているがもう一跳ねしてほしいアーティストをつけることが多い。特にアジカンはキャリア初期で、同曲により一皮むけたブレークを果たしました。またスタッフにしても、今では監督をやっているような人物が入っていたりします。同作は原作がまだ連載中だったため、終盤はオリジナルストーリーですが、原作に準拠した2009年放送の『―FULLMETAL ALCHEMIST』という作品もあります。両方合わせて見て、ぜひその深みを味わってみてください」

「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」©荒川弘/鋼の錬金術師製作委員会

ふじつ・りょうた●1968年生まれ。新聞記者、週刊誌編集を経て、2000年よりアニメ関係の記事を執筆。雑誌、Blu-rayブックレットなども多数手掛ける。近著は「アニメと戦争」(日本評論社)。

取材・文=衣輪晋一

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放送情報

鋼の錬金術師〈映画公開記念 4週連続 全話一挙放送〉

放送日時:2022年5月7日(土)21:00~

チャンネル:カートゥーン ネットワーク

鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST

放送日時:2022年5月24日(火)18:00~

チャンネル:キッズステーション

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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