羽生善治竜王のタイトル通算100期か、27年ぶりの無冠か、社会的にも大きな注目が集まった「第31期竜王戦七番勝負」。前期の第30期竜王戦は羽生竜王の永世七冠なるかで注目が集まり、2期連続で盛り上がるシリーズとなった。その七番勝負の第3局から第5局までを振り返る「最新対局徹底解説」が、4月2日(火)、16日(火)、23日(火)に囲碁・将棋チャンネルで放送される。
開幕から竜王の羽生善治が2連勝で、一気に防衛に近づいたシリーズ。「やはり羽生強し」を印象付ける内容で、タイトル100期が見えてきたと思われた。転機となったのは第3局、第4局で、いずれも挑戦者の広瀬章人八段が逆転勝ちを収め、2勝2敗の五分に持ち込んだ。
■シリーズの流れを変えた第3局、第4局
第3局は角換わり腰掛け銀(双方の角を取り合い、▲5六銀や△5四銀と歩の前に銀を構える戦法)。角換わりは第1局、第2局に続き3局連続の登場だ。角換わりは近年大流行中で、それを象徴するかのようなシリーズとなった。先手の羽生竜王が猛攻を仕掛け、大きな駒損となったが、鋭い攻めを連発して優位に立つ。しかし終盤、広瀬八段の勝負手に対応を誤り、後手玉が詰まなくなってしまう。一瞬のスキを突いて体を入れ替え、広瀬八段が逆転勝ちを収めることとなった。広瀬八段の勝負手△7五歩にはどう対応するのが正しかったかなど、逆転の周辺を詳しく解説する。
第4局も先後を入れ替えて角換わり腰掛け銀に。難解な中盤戦となったが、羽生竜王に好手が出て抜け出す。羽生竜王は中段玉(四、五、六段目に玉を置くこと。相手は玉を詰めにくいとされる)を安定させて不敗の態勢を作り上げる。3勝目に大きく近づいたかに見えたが、まさかの逆転負けを喫してしまう。この将棋は大逆転といってもいい内容で、広瀬八段はタイトル奪取につながる大きな白星を得た。大逆転となった原因は何か、後手はどう指すのが正しかったかを振り返っていく。
■タイトル通算100期に王手とした第5局
第5局は先手の羽生竜王が矢倉囲い(互いに自陣で王を金や銀などで囲んで守る形)を選択。角換わり以外の戦型が出たのはこのシリーズで初めてとなった。後手が急戦の駒組みを見せて難解な中盤となったが、先攻した羽生竜王がペースを握る。終盤は妙手を連発し、広瀬八段の玉の脱出を許さずに羽生竜王が押し切った。2連勝からの2連敗で流れが悪いところだったが、本局は底力を見せて防衛まであと1勝とした。羽生竜王の妙手▲3三桂や、異筋の金打ちとして話題を呼んだ▲7一金打を詳しく解説する。
熱戦の多かった第31期竜王戦七番勝負。結果的には残る第6局、第7局を広瀬八段が連勝、4勝3敗として新竜王となった。羽生善治九段が27年ぶりの無冠となり大きなニュースとなった将棋史に残るシリーズ。今あらためて振り返ると、当時の対局の緊張感が思い出されるだけでなく、新たな発見があるかもしれない。
文=渡部壮大
放送情報
最新対局徹底解説 #509、#511、#512
放送日時:2019年4月2日(火)、16日(火)、23日(火)18:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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