西の将棋王子と呼ばれる、関西を代表する人気棋士が斎藤慎太郎王座だ。昨年の第66期王座戦では中村太地王座(当時)に挑戦。中村も人気が高く東の将棋王子と呼ばれており、東西王子対決として絵になるタイトル戦となった。ルックスでも注目が集まったシリーズだが、対局の方も熱戦揃いでフルセット。激戦の五番勝負を制したのは斎藤で、悲願の初タイトルを奪取した。
現タイトルホルダーの豊島将之名人(王位)や斎藤王座を筆頭に、糸谷哲郎八段(竜王1期)、稲葉陽八段(名人挑戦者)、菅井竜也七段(王位1期)、千田翔太七段(棋王挑戦者、現在は関東に移籍)ら現在20代後半~30代前半の関西奨励会出身棋士には非常に有望な棋士が多い。
有望な棋士を立て続けに輩出した要因の1つとして、奨励会幹事を務めた畠山鎮七段の存在があげられる。斎藤王座は畠山の一番弟子でもあり、奨励会時代から多く盤を挟んできたそうだ。プロ入り後は公式戦でたびたび対戦しており(斎藤から見て3勝1敗)、今期も順位戦B級1組で対戦する。順位戦で師弟対決をするには総当たりとなるA級、もしくはB級1組に同時に在籍をする必要があり、師弟ともに実力がないとできないことだ。
斎藤王座は実家がカレーチェーン店のフランチャイズオーナー。上品な佇まいからも育ちの良さが伺えるだろう。その影響もあってか、好きな食べ物にはカレー(他にはラーメン)を挙げる。イケメン棋士としてデビュー当初から注目されており、180cm近い身長とスタイルも良い。女性人気の高さはもちろんだが、はんなりとした関西弁で繰り出されるトーク力も抜群のため、男性ファンも多い。人気、実力を兼ね備えたスター棋士としてイベントでも活躍している。
2012年4月、18歳でのデビューから順調に活躍し、昇級、昇段を重ねていく。初のタイトル挑戦は2017年の第88期棋聖戦五番勝負。羽生善治棋聖(当時)と熱戦を繰り広げたが、結果は羽生から見て3勝1敗で、力の差を見せつける形で防衛となった。
しかし翌2018年の王座戦で2度目のタイトル戦登場を果たし、見事に奪取したのは冒頭で触れた通りだ。王座挑戦に至る本戦トーナメントでは渡辺明棋王(当時)、久保利明王将(当時)らタイトルホルダーの他、藤井聡太七段も破った。
斎藤王座の趣味は詰将棋。「詰将棋を愛している」と公言するほどで、創作も手掛けている。藤井の活躍で有名になった詰将棋解答選手権でも優勝経験があり、2019年は藤井に次ぐ2位の好成績を収めている。
斎藤王座にとって初の防衛戦となる第67期王座戦五番勝負は9月~10月に行われる。相手は今春初タイトルの叡王を獲得し、勢いに乗って二冠を目指す永瀬拓矢叡王。ともに居飛車党で、斎藤王座は切れ味のある攻め将棋、永瀬叡王はタフな受け将棋だ。勝ちまくっている両者だが東西分かれていることもあってか、公式戦での対戦は意外に少ない。斎藤王座の切れ味が挑戦者の受けを突破できるか、注目のシリーズだ。
文=渡部壮大
放送情報
(将棋)タイトル戦 徹底解説 #896 第66期 王座戦 第1局 中村太地王座 vs 斎藤慎太郎七段
放送日時:2019年9月11日(水)4:48~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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