七冠制覇、タイトル99期、永世七冠など、将棋界の生きる伝説羽生善治九段。だが昨年末、唯一持っていた竜王を奪われ27年ぶりの無冠に転落してしまった。しかし、その後のNHK杯将棋トーナメントで優勝し、存在感を見せつける。前期のA級順位戦でも最後まで挑戦権を争い、今期の王位戦では挑戦者決定戦に進出するなど、まだまだトップ棋士の一角として活躍中だ。
そんな羽生善治九段に対していま最も期待されているのは、やはりタイトル戦の大舞台への再登場だろう。現在のタイトル数は通算99期であり、次に挑戦した時は「100期への挑戦」として大々的に注目を集めることが予想される。タイトル挑戦、そして獲得は簡単なことではないが、やはり節目の記録として見たいファンも多いだろう。
現在は第69期王将戦の挑戦者決定リーグに勝ち上がっており、秋に行われるリーグ戦で1位になれば渡辺明王将への挑戦権を得る。豊島将之名人、広瀬章人竜王のタイトルホルダーの他、注目の藤井聡太七段も初のリーグ入りを決めており、どの組み合わせを見てもワクワクするような夢のリーグだ。
羽生も今年でついに49歳。あと1年で50歳を迎え、ベテランと言っても良い年齢に差し掛かっている。平成で最強の棋士は間違いなく羽生だが、昭和の最強棋士は大山康晴十五世名人(タイトル通算80期)。大山は若いころから強かったが、特筆すべきは歳を重ねてからも強かったこと。50代でもタイトル11期を獲得(59歳の王将防衛が最年長記録)、さらに63歳で名人挑戦、66歳で棋王挑戦など、69歳で亡くなるまでトップ棋士であり続けた。羽生が50代になった後にどれだけ活躍できるかにも注目だ。
もう1つ、多くの関係者、ファンが期待しているのが藤井聡太とのタイトル戦だろう。先述した大山の時代を終わらせたのが中原誠十六世名人で、タイトル通算64期の大棋士。この中原と羽生の年齢差は23歳だが、両者のタイトル戦を見ることはかなわなかった。中原も引退時のコメントで「羽生さんとタイトル戦を戦えなかったのが残念」と振り返っている。同世代のライバル対決も面白いが、やはり時代の覇者同士の戦いも見たいところ。羽生と藤井は32歳差で、羽生と中原以上の年齢差があるのだが、スーパースター同士のタイトル戦は必ず実現してほしいものだ。そのためにもまずは羽生がタイトルを奪取して100期を達成し、挑戦者を待つ状況となることが期待される。
羽生は今年6月1434勝目をあげ、大山十五世名人の持つ通算勝利数1433勝を塗り替えた。これからは勝つたびに記録を更新することにもなる。将棋界のレジェンドが台頭する若手とどのように戦っていくか、今後も目が離せない。
文=渡部壮大
放送情報
タイトル戦 徹底解説 #917 第31期 竜王戦 第6局 羽生善治竜王 vs 広瀬章人八段
放送日時:2019年9月27日(金)22:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
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