2019年度の藤井聡太七段は勝率、勝数の2部門で1位となった。対局数は2位、連勝は3位で惜しくも届かなかったが、例年と変わらず勝ちまくった1年だったと言える。3年連続の勝率8割達成は中原誠十六世名人や羽生善治九段も達成できなかった史上初の快挙だ。
※対局予定棋士との対戦成績は藤井から見た過去の対戦成績
■タイトル挑戦権獲得に期待が高まる
2月29日に第91期棋聖戦決勝トーナメント1回戦で斎藤慎太郎八段と対戦。藤井が先手となり角換わり腰掛け銀へ。難解な戦いが続いたが、徐々に形勢をリード。最後も巧みな寄せを決め、終わってみれば快勝だった。
続いて3月31日には2回戦で菅井竜也八段と対戦。菅井の四間飛車穴熊に藤井は銀冠。いつものようにふんだんに時間を使い、残り5分に対し残り約2時間と大差がついたものの、時間切迫でも崩れない。しかし菅井も食いつき、最後は両者譲らず千日手に。指し直し局は再び菅井の四間飛車穴熊に、今度は穴熊で対抗。長期戦となったが藤井は時間切迫をものともせず、最後は巧みな穴熊攻略を見せて押し切った。これでベスト4進出。準決勝では郷田真隆九段と佐藤天彦九段の勝者と対戦する。
3月9日に第46期棋王戦予選で出口若武四段と対戦。出口の角換わりに後手の藤井は早繰り銀を採用する。堅陣に組んだものの、出口にうまく動かれて苦戦に陥った。以下必死の手作りを見せるが苦しい戦いは続き、最終的には押し切られた。安定感のある指し回しを見せる藤井にしては珍しい拙戦だった。
3月12日に第33期竜王戦ランキング戦3組2回戦で高橋道雄九段と対戦。久しぶりの横歩取りとなり、早い戦いになる。駒損ながらうまくバランスを取ってリードを奪い、最後は一気に決めて制勝。
4月3日に行われた準決勝では千田翔太七段と対戦し、こちらも勝利。決勝では師匠の杉本昌隆八段(1勝0敗)と対戦する。勝てば4期連続のランキング戦優勝、そして決勝トーナメント進出が決まる。
3月16日に第68期王座戦二次予選で阿部隆八段と対戦。阿部の矢倉に藤井は急戦を仕掛ける。角金交換の駒損ながら歩を得し、ペースをつかむ。難解な戦いが続いたが、阿部の受け間違いをとがめてからは鋭い切れ味を見せて制勝。二次予選決勝では大橋貴洸六段(2勝2敗)と対戦する。
3月20日に第61期王位戦挑戦者決定リーグ白組2回戦で上村亘五段と対戦。角換わり腰掛け銀から難解な競り合いが続く。お互いに形勢を保つ熱戦となったが、抜け出したのは藤井。一瞬のチャンスをとらえて上村玉を詰まし、リーグを2連勝とした。
続く24日には稲葉陽八段と対戦。角換わり腰掛け銀から藤井は湯水のように時間を使う。一番差がついたところでは藤井の持ち時間は9分、稲葉の持ち時間は3時間22分。時間切迫から藤井にミスが出て稲葉に形勢が傾くが、勝負手を連発し楽をさせない。それでも徐々に追い詰められて万事休すかに見えたが、最後に稲葉にミスが出る。一分将棋の中、藤井はチャンスを逃さず長手数の即詰みに討ち取り、見事な逆転勝ちを収めた。これでリーグは3連勝。残りは菅井竜也八段(3勝2敗)、阿部健治郎七段(1勝0敗)となっている。
■順位戦、銀河戦でも勝ち星を重ねる
3月3日に第78期順位戦C級1組10回戦で真田圭一八段と対戦。じっくりと組み合う相矢倉戦となり、藤井はすでに1位で昇級を決めており消化試合だが、普段通り時間をふんだんに使って対局を進める。徐々にペースをつかむと、強い受けで局面を決めに出る。攻めに転じてからは一気に寄せて、今期の順位戦は10戦全勝で締めた。一年を通じて安定感のある戦いぶりで、B級2組でも昇級争いの大本命だろう。
第28期銀河戦は3月3日に放送された本戦Cブロック6回戦から登場。出口若武四段の三間飛車に藤井は銀冠の持久戦。力強い指し回しで難解な中盤を乗り切り、最後は読み切って制勝。しかし出口はここまで5連勝していたため、藤井が決勝トーナメント進出するには5連勝が必要な状況だ。
続く3月31日に放送された7回戦で中村修九段と対戦。中村の右玉に苦戦を強いられるが、際どい寄せ合いの中、攻防手を放って競り勝つ。これでブロック2連勝。8回戦では森内俊之九段(2勝0敗)と対戦する。放送は4月28日(火)の予定。
3月29日に詰将棋解答選手権が開催される予定だったが、新型コロナウィルスの感染拡大により中止となった。藤井は5連覇中で、本人も毎年楽しみにしていただけに残念だろう。
第70回NHK杯将棋トーナメント、藤井はシードで本戦からの登場になっており、1回戦は塚田泰明九段(初手合)と対戦する。
文=渡部壮大
放送情報
(将棋)第28期 銀河戦 本戦Cブロック 8回戦 森内俊之九段vs藤井聡太七段
放送日時:2020年4月28日(火) 20:00~ほか
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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