'90年から開催されている竜星戦。現在決勝トーナメントの16枠をかけて、96人の棋士が勝ち抜き戦(本戦)に挑んでいる最中だ。
「一手30秒以内に打たなければいけない"竜星戦"は、正確で速い読みが必要。頭の回転が速いと考えられる若手が活躍しやすい棋戦です」と、教えてくれたのは、棋士・吉原由香里六段。
昨年の第28期竜星戦では、若干17歳の上野愛咲美棋士が準優勝したことも大きな話題となった。
「女流棋士の活躍が見られるのもこの竜星戦ならではですね。男女一緒の棋戦で女性が上位に食い込むというのはこれまでなかなか難しかったのですが、上野さんの準優勝のほか、前年の第27期では藤沢里菜さんもベスト8に進出しています。もちろん今期は男性棋士もさすがのメンバーたちが勝ち上がっています。今、日本のトップである3名の棋士、井山裕太さん、芝野虎丸さん、一力遼さんは注目ですね。特に井山さんは国民栄誉賞も受賞されていて、日本で一番大きなタイトルである"棋聖"を持っている方。圧倒的な強さを誇っているんですが、一手30秒の棋戦では若手にやられることもあるんです。井山さん自身もまだ31歳で決して若くないわけではないんですが、最近の囲碁の世界は10代後半から20代前半の躍進が目覚ましい。芝野さんは20歳、一力さんは23歳と二人とも若いので、竜星戦ではどんな戦いになるか楽しみです」
実力は折り紙付き。そんな彼らは、それぞれパーソナリティもユニークなのだという。
「囲碁界は面白い人が多いんですよ。特に普段の芝野さんは、囲碁で見せる鋭さからは想像もつかないほどの天然ぶり(笑)。皆から"虎ちゃん"という愛称で呼ばれてかわいがられていますね。『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)に出演した際に、ものすごく成績の悪い通知表が公開されていたり...(笑)。バラエティ力も高くて、囲碁界の愛すべきゆるキャラです。一力くんは、絵に描いたような好青年。すごく真面目な方なんですが、ちょっと変わった経歴を持っているんです。実は今年から新聞社に新入社員として入社しました。棋士と新聞記者。二足のわらじを履く棋士はこれまでいなかったので、すごく珍しい例ですね。棋聖の井山さんも若手棋士を前に『年寄りの悪い癖で』と自虐ネタを言ったり、ユーモアがある方です。とはいえ3人とも圧倒的な強さを持つのは事実。それぞれのパーソナリティーを知って対局を見ると、また違う面白さがあるかもしれません」
よしはら・ゆかり●東京都出身。加藤正夫名誉王座門下。'07年から女流棋聖3連覇。NHK杯戦の司会やドラマ・漫画の囲碁監修の他、現在は慶應義塾大学特別招聘講師も務める。
取材・文=嶋根理恵
放送情報
厳選棋譜解説
放送日時:2020年7月1日(水)18:00~
第29期 竜星戦
放送日時:2020年7月1日(水)20:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
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