新型コロナウイルス感染拡大防止により、当初4月に開幕する予定だった名人戦七番勝負、叡王戦七番勝負の開幕が6月にずれ込んだ。そのため、6月~8月は例年以上にタイトル戦が目白押しとなっている。そこで8月5日現在までの、豊島将之竜王名人、永瀬拓矢二冠、渡辺明二冠、木村一基王位、藤井聡太棋聖の戦いぶりを振り返る。
■棋聖戦五番勝負 渡辺棋聖1-3藤井七段(奪取)
6月8日に開幕した棋聖戦五番勝負は、渡辺棋聖(当時)に藤井七段が挑む構図。メディアでも広く報じられ、結果は多くの人が知るように、史上最年少タイトル挑戦となった藤井七段が圧巻の強さを見せ、3勝1敗で奪取。第3局では渡辺棋聖が研究の成果を見せて1勝をもぎ取ったものの、全体的には藤井七段の強さが光るシリーズとなった。特に第1局は大熱戦で、今年度の名局賞の有力候補といえるだろう。現役最年少ながらタイトルは時間の問題といわれていた藤井七段が、最強の相手を下して初タイトルを手にした。
■名人戦七番勝負 豊島名人2-2渡辺二冠
6月10、11日に開幕した名人戦七番勝負は、豊島名人に渡辺三冠(当時)が挑戦。実績十分の両者だが豊島名人は初防衛を懸けて、渡辺三冠は初めて名人戦に登場。開幕戦は渡辺三冠が勝ったが、そこから豊島名人が2連勝、第4局は渡辺二冠が返し、ここまでは2勝2敗と全くの互角。第5局は8月7(金)、8日(土)に行われる。ここを制し、3勝目を挙げるのはどちらになるか、将棋界最高峰の戦いは簡単には終わらない。
■叡王戦七番勝負 永瀬叡王2-2豊島竜王名人(2持)
棋史に残る珍しい戦いになっているのが、6月21日に開幕した叡王戦七番勝負。永瀬叡王に豊島竜王名人が挑戦している。第1局は終盤で千日手となり、指し直しを豊島竜王名人が制した。これだけなら普通の勝負だが、第2局は互いに入玉を果たし、決着せずの持将棋が成立し引き分けとなった。タイトル戦での持将棋は十数年に一度のことで、引き分けとして打ち切り次の将棋へと進む。ところが第3局も相入玉となり持将棋と、まさかの出来事が続く。第2局、第3局が続けて引き分けとなり、第4局も持将棋より長い手数の大熱戦となるが、ここは永瀬叡王が制した。
第5局は永瀬叡王が逆転勝ち、第6局は豊島竜王名人が競り勝ち、2勝2敗2分となっている。本来最終局となるはずだった第7局は8月10日(月)に行われるが、絶対に決着しない状況で迎えることとなった。現状でフルセットになると史上初の第9局までもつれ込むが、さらに持将棋や千日手が出てくる可能性もありそうだ。
■王位戦七番勝負 木村王位0-3藤井棋聖
7月1、2日に開幕した王位戦七番勝負は、木村王位に藤井七段が挑戦。棋聖戦に続き、藤井七段と永瀬二冠の挑戦者決定戦だったが、どちらも藤井七段が競り勝って挑戦権を手にした。昨年史上最年長で初タイトルを獲得した木村王位は初の防衛戦。鋭い攻めで第1局を制した藤井七段が第2局も逆転勝ちで連勝。さらに第3局も勝ち、3連勝とした。第4局は8月19(水)、20(木)日に行われる。将棋界のスーパースターが波に乗って二冠目を獲得し、さらに熱狂を加速させるのか注目だ。
近年に初タイトルを獲得した棋士は、名人を獲得した佐藤天彦九段(名人3連覇)を除くと誰も初防衛に成功していない。現タイトルホルダーでは渡辺二冠以外に防衛経験がなく、この中から長期政権を築く棋士が現れるか。長い梅雨が明けて夏真っ盛りとなる8月だが、盤上での戦いも熱いものになりそうだ。
文=渡部壮大
放送情報
第27期 銀河戦 本戦Eブロック 8回戦 畠山鎮七段 vs 藤井聡太七段
放送日時:2020年8月12日(水)1:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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