将棋界で最もキツいリーグ、と言われるのが王将戦の挑戦者決定リーグだ。その理由は枠の狭さにあり、名人への挑戦権を争うA級順位戦が10人で行われるのに対し、王将リーグは7人しか参加できない。なお、王将戦は将棋界の中では名人戦、竜王戦(前身の九段戦、十段戦含む)に次ぐ3番目の歴史があるタイトル戦だ。
7人が総当たりで戦い、1位が渡辺明王将(名人・棋王)との七番勝負を行う。同星で複数人が並んだ場合は、上位2名(前年の成績による順位)でのプレーオフだ。7人中3人が陥落と、リーグ残留を決めるのも容易ではない。
最も注目を集めるのは、やはり藤井聡太二冠だろう。昨年17歳の若さでリーグに初参戦し、5戦を終えて4勝1敗と、トップタイの成績。最終戦は同じく4勝1敗の広瀬章人八段で、事実上の挑戦者決定戦となった。二転三転する大熱戦となったが、最後の最後に藤井が王手への対応を誤りトン死。劇的な結末で初のタイトル挑戦はお預けとなった。とは言え初参加の最年少棋士が4勝2敗の成績で残留は、見事の一言だろう。この敗戦を糧に藤井はさらなる成長を遂げ、以降は約9割の勝率を誇り、あっという間に二冠を奪取してしまった。激戦のリーグだが、挑戦争いの本命と言えるだろう。
前期残留の豊島将之竜王、予選を勝ち上がってきた永瀬拓矢二冠にも注目だ。豊島は前期藤井を破った星を含め4勝2敗、王将戦七番勝負にも2度の挑戦経験があるリーグ常連。タイトルの防衛戦でこそ苦労が続いているが依然として安定した強さで、3度目の王将挑戦、そして初の王将獲得を狙う。永瀬は意外にも初のリーグ入り。タイトルを取ってから調子を落とす若手棋士が多い中、永瀬は好成績を続けている。防衛戦と並行してのリーグ戦は大変だが、地力の高さを見せることだろう。
前期、渡辺に挑戦するも3勝4敗でわずかに届かなかった広瀬章人八段は、今年に入って黒星が増えている。不調と言える状況だが、対局を重ねていく中で調子を取り戻すことができるか。
羽生善治九段は前期残留組。順位戦はA級、竜王戦は1組、他に王位リーグも残留していながら衰えたと言われてしまうのは、羽生くらいのものだろう。タイトルは通算99期で、多くのファンが100期目への挑戦を期待している。リーグ最年長のレジェンドがどのような戦いぶりを見せるか注目だ。
昨年史上最年長での初タイトルを獲得した木村一基九段はタイトル挑戦7回と、長きにわたって活躍している。そんな木村でさえも王将リーグ入りしたのは今回が初。いかに王将リーグが狭き門かお分かりだろう。王位は失冠したが「百折不撓」の精神で再起を誓う。
佐藤天彦九段は2期ぶりのリーグ復帰。近年タイトル挑戦からは遠ざかっているものの、名人3期を誇る実力者。虎視眈々と挑戦を狙っていることだろう。
注目の王将リーグは9月22日(火)に藤井二冠─羽生九段戦で開幕する。スーパースター同士の対戦は公式戦では5度目。これまでは藤井が全勝だが、果たして今度はどうなるか。王将リーグの模様は「囲碁・将棋チャンネル」で一部(藤井対局のみ)生放送される他、「将棋プレミアム」では全局生中継される。すべての対局が見どころと言える豪華メンバーで、一局たりとも見逃せない。
文=渡部壮大
放送情報
第70期 王将戦 挑戦者決定リーグ戦 藤井聡太二冠 vs 羽生善治九段 ※対局終了まで延長放送
放送日時:2020年9月22日(火)9:50~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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