鉄板の純愛ストーリーから、ひねりを加えたものまで、ひと口に恋愛映画といっても多種多様。バレンタインのタイミングで改めて見たい作品として、3本の恋愛映画を有村さんに解説してもらった。
王道の恋愛ドラマを描きながらハリウッドの常識を変えた一本として有村さんが薦めるのが、'18年に大ヒットを記録した「クレイジー・リッチ!」。
「メジャースタジオが配給した作品で、主要キャストにアジア系の俳優だけを起用したということが異例でした。地に足の着いた中国系アメリカ人のヒロインと御曹司の恋模様を彼の故郷・シンガポールを舞台に描くんですが、ヒロインの地味な雰囲気に好感を持てましたし、『恋愛で大切なのはお金じゃない』というメッセージも含めてちゃんと夢を見させてくれる。恋愛映画の王道ストーリーを中国資本も入れてアジアを舞台にして作ったら、アジア系以外の層からも支持された...という、近年のハリウッドにおける多様性の流れを象徴する作品としても楽しんでいただけると思います」
2本目は「フィフティ・シェイズ」3部作の最終作「―フリード」。有村さんは「同人誌的な感覚」が本作の肝だと言う。
「原作は世界的ベストセラーですが、その発端は原作者のE・L・ジェームズが趣味で書いてネットで公開していた二次創作小説なんです。ごく普通の女子大生が金持ちのイケメン御曹司と出会い、好きになったら実は彼がSM好きだった...という官能的なストーリーを、映画版でもエロいシーン満載で描いています。見どころは主演のダコタ・ジョンソンの体当たり演技ですね。脱ぎっぷりが気持ちいいし、美人過ぎない雰囲気もリアル。あまり一般的ではなかったSMというジャンルをオシャレなものに作り変えたのは大きな功績でしたし、やりたいことを最後までやり通した"偏り"がよかったです」
ラストは純愛ものの代表作「私の頭の中の消しゴム」。
「この映画は伏線回収がよくできていて、泣かせるポイントでちゃんと泣かせにくる。主演のチョン・ウソンとソン・イェジンもとても魅力的でした。ウソンは気性が荒いワイルド系イケメン。一方のイェジンは金持ちで箱入り娘のお嬢さん。この美女と野獣カップルに若年性アルツハイマー病という障壁が立ちはだかる...。『うまくいく恋ほどつまらない』と言いますが、障壁を乗り越えて愛は盛り上がるということですね。だからこそ登場人物たちを応援したくなりますし、恋に悩んでいる人の背中を押してくれる気がします」
ありむら・こん●'76年7月2日生まれ、マレーシア出身。年間500本の映画を鑑賞。最新作からB級映画まで幅広い見識を持つ。YouTubeでは「有村昆のシネマラボ」で本音の映画批評を配信中。
聞き手=山崎ヒロト(Heatin' System)
放送情報
私の頭の中の消しゴム
放送日時:2021年2月6日(土)21:00~
チャンネル:FOX
フィフティ・シェイズ・フリード
放送日時:2021年2月13日(土)1:30~
チャンネル:ザ・シネマ
クレイジー・リッチ!
放送日時:2021年2月13日(土)20:55~
チャンネル:ムービープラス
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