朝日杯で2年ぶり3度目の優勝、順位戦も2年連続の昇級と、藤井聡太二冠の勢いが止まらない。4年連続勝率8割も目前だ。高校を中退したとの報もあったが、今後は将棋に専念してますます強さに磨きが掛かることだろう。藤井の2月を振り返ってみたい。
※対局予定棋士との対戦成績は藤井から見た過去の対戦成績
■第14回朝日杯将棋オープン戦で2年ぶり3度目の優勝
2月11日に第14回朝日杯将棋オープン戦準決勝で渡辺明名人と対戦。相掛かりから渡辺が研究の深い順に誘導するが、藤井も負けじとついていく。難解な戦いが続いたが実戦的には後手の藤井がまとめにくい形だったようで、渡辺がリードを奪う。局面ははっきり苦戦となったが、その中でも攻守織り交ぜた手を放ち続け相手に楽をさせない。それでも渡辺の冷静な指し回しの前にいよいよ追い詰められたが、渡辺が最後の勝負手に誤り逆転。降りてきた勝ち筋を藤井が逃さず、土壇場の大逆転劇となった。
続く決勝は西田拓也四段(当時)を下して勝ち上がってきた三浦弘行九段と。三浦の誘導で力戦調の横歩取りとなり、玉が薄く神経を使う展開となったがうまく局面をまとめていく。しかし終盤、三浦の勝負手に藤井には珍しいミスを犯す。形勢は三浦に傾いたが、最終盤で再逆転。最後は中段玉で際どいしのぎを見せ、藤井が制勝した。終盤の逆転術を見せた藤井は2年ぶり3度目の朝日杯優勝。
■第79期順位戦ではB級1組への昇級が決定
2月9日に第79期順位戦B級2組10回戦で窪田義行七段と対戦。窪田得意の四間飛車に藤井は玉の囲いもそこそこに動いていく。仕掛けでリードを奪うと、そのまま攻守ともに手堅い指し回しを重ねて押し切った。これで9連勝と星を伸ばし、最終戦を前に1位でB級1組への昇級が決まった。
最終戦は3月10日で中村太地七段(1勝0敗)と対戦する。すでに藤井の1位昇級は決まっているが、全勝を掛けての対戦だ。
2月18日に第34期竜王戦2組ランキング戦で広瀬章人八段と対戦。先手の藤井は相掛かりを初採用。これまで先手では角換わりや矢倉を主戦場に戦っていた。じっくりと駒組をする持久戦になるかと思われたが、広瀬陣の不備をついた機敏な仕掛けでリードを奪う。以降も見事な構想で的確に押し切り、2組準決勝に進出。次戦は松尾歩八段(1勝0敗)と対戦。勝てば5年連続の決勝トーナメント進出となる。
第6期叡王戦は八段予選決勝に進出。予選決勝は広瀬章人八段─糸谷哲郎八段戦の勝者と対戦する。第29期銀河戦、前回優勝の藤井はHブロック最終戦での登場となる。放送は今秋の予定。第69期王座戦、第47期棋王戦はいずれもシードのため本戦からの登場。
藤井への挑戦者を決める第92期ヒューリック杯棋聖戦の決勝トーナメント、お~いお茶杯第62期王位戦の挑戦者決定リーグが開幕。棋聖戦は4月下旬、王位戦は5月下旬には挑戦者が決まる見込み。
また、日本将棋連盟から2020年の獲得賞金・対局料ランキングが発表され、藤井は前年の9位から4位へとランクアップした。
文=渡部壮大
放送情報
第70期 王将戦 挑戦者決定リーグ戦 藤井聡太二冠 vs 羽生善治九段
放送日時:2021年3月6日(土) 20:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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