勝負の夏も圧倒的な強さを見せつけた藤井聡太、8月の対局を振り返る

棋聖戦に続き王位戦でも防衛に成功。そして竜王戦でも挑戦権を獲得した藤井聡太二冠。これまでも圧倒的な強さを見せてきた藤井だが、ここに来て更なる成長を遂げている。10代のうちにどこまでタイトルを増やすことが出来るだろうか。

※対局予定棋士との対戦成績は藤井から見た過去の対戦成績

8月3日に第6期叡王戦五番勝負第2局で豊島将之叡王と対戦した藤井。王位戦第2局と同様の角換わり相早繰り銀からうまく手を作った藤井がリードを見せた。しかし時間が少なくなってから豊島の勝負手連発に対応を誤り逆転される。最後の王手ラッシュにも正確に対応されての敗戦となった。これで五番勝負は1勝1敗。

8月6日に第34期竜王戦決勝トーナメントで八代弥七段と対戦。矢倉対急戦模様の戦いから、気が付くと徐々に藤井がリード。最後は差が開き、終わってみれば快勝となった。これで挑戦者決定三番勝負に進出。

8月9日には叡王戦第3局で豊島叡王と対戦。角換わり腰掛け銀の定跡形から難解な攻防となるが、豊島の攻めにうまく対応した藤井がリード。時間にも余裕を残し、的確な反撃で素早く寄せ切って完勝。これで五番勝負は2勝1敗に。

8月12日に竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局で永瀬拓矢王座と対戦。永瀬が意表の先手三間飛車から相穴熊へ。永瀬の押さえ込みに藤井が手を作る展開となるが、歩の手筋を駆使して網を破り、ペースをつかむ。以降も延々と戦いが続いたものの、最後まで崩れずに押し切った。これで竜王挑戦まであと1勝。

8月16日に第71期ALSOK杯王将戦2次予選で稲葉陽八段と対戦。角換わりの相早繰り銀から藤井がリードを奪うが、終盤に珍しく逆転を許す。その後は形勢が激しく揺れ動く競り合いとなるが、最後は辛くも藤井が制勝。リーグ復帰を決めた。

8月18、19日にお～いお茶杯第62期王位戦七番勝負第4局で豊島竜王と対戦。相掛かりから超難解な中盤戦が続くが、終盤に入り徐々に藤井に形勢が傾いていく。最後は鮮やかに寄せて快勝となった。これで七番勝負は3勝1敗で防衛まであと一つとした。

8月22日に叡王戦第4局で豊島叡王と対戦。相掛かりから藤井の動きに対して豊島が的確に対応してリードを奪う。その後も付け入るスキを与えず押し切り、藤井にしては珍しい完敗となった。これで2勝2敗となり決着は9月13日に行われる第5局へ。

■王位戦での＂ダブル防衛戦＂でも圧倒的な強さを発揮！

8月24、25日に王位戦第5局で豊島竜王と対戦。叡王戦第4局と先後を入れ替えての相掛かり。2日目に入って早々、豊島に誤算があったようで藤井が駒得に成功。辛抱を重ねる豊島に対し、藤井は得した駒で手厚い指し回しを見せる。そのまま投了に追い込み、七番勝負を4勝1敗として防衛を果たした。タイトルは通算4期目で二冠堅持。竜王と名人を挑戦者に迎えたダブル防衛戦は合計7勝1敗と圧倒的な強さを見せた。

8月30日に竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第2局で永瀬王座と対戦。相掛かりから双方研究済みを思わせる乱戦となるが、抜け出したのはやはり藤井。そのまま快調に差を広げ、短手数での快勝となった。2連勝で初の竜王戦七番勝負登場。豊島将之竜王との七番勝負は10月8、9日に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で開幕する。

第4回ABEMAトーナメント本戦、藤井のチーム(高見泰地七段、伊藤匠四段)は8月28日に広瀬章人八段のチーム(丸山忠久九段、北浜健介八段)と対戦した。藤井は1勝0敗、チームも5勝1敗で勝利。準決勝では菅井竜也八段のチーム(郷田真隆九段、深浦康市九段)と対戦する。

第80期順位戦B級1組は4回戦を終えて3勝1敗。次戦は9月に木村一基九段(6勝1敗)と対戦する。

第47期棋王戦挑戦者決定トーナメントの組み合わせが決定。藤井は初戦で斎藤明日斗四段(初手合)と対戦する。対局は9月2日の予定。

第71期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグは7人による総当たり。永瀬拓矢王座、豊島将之竜王、羽生善治九段、広瀬章人八段、藤井聡太二冠、糸谷哲郎八段、近藤誠也七段となっている。

第29期銀河戦、前回優勝の藤井はHブロック最終戦での登場。相手は行方尚史九段か佐々木勇気七段で、放映は10月14日(木)の予定。

第71回NHK杯将棋トーナメントで、シードの藤井は2回戦で深浦康市九段(1勝2敗)と対戦する。

第42回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は初戦シード。2回戦では千田翔太七段(3勝1敗)と対戦する。対局は9月25日の予定。

文＝渡部壮大

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