十七世名人となった谷川浩司のこれまでの活躍を振り返る!

谷川浩司十七世名人
谷川浩司十七世名人

かつては羽生善治九段や中原誠十六世名人と数々のタイトル戦で戦い、トップ棋士として活躍した谷川浩司九段。この度還暦を迎え、十七世名人を襲位することとなった。

谷川はタイトル獲得が27期(歴代5位)、タイトル戦登場は57回、棋戦優勝は22回を数える大棋士の一角だ。終盤の切れ味は抜群で「光速の寄せ」と名付けられた。プロデビューは14歳の時で、史上2人目の中学生棋士となった。谷川の持つ記録は様々あるが、特に印象的なものを挙げよう。

1つは21歳2ヶ月の史上最年少名人。順位戦ではC級2組で1期足踏みしたものの、その後は連続でA級まで昇級。初参加となったA級順位戦はプレーオフの末に挑戦権を獲得。加藤一二三名人から奪取を果たした。なお、加藤は中学生棋士の第1号であり、史上最年少名人挑戦の記録も持っている。

その後は四冠王にまで上り詰めるが、以降羽生善治九段を代表する羽生世代との激闘が続くことになる。最も有名なシリーズは、羽生善治が七冠制覇を懸けた王将戦だろう。破竹の勢いで六冠を制覇し、最後は谷川の保持していた王将位。だがこの王将戦をフルセット、そして最終局は千日手指し直しという激闘の末に競り勝ち、羽生の七冠を阻止した。ただし、羽生はその後すべてのタイトルを防衛、翌年王将に再挑戦して七冠を達成している。
 
七冠を許した谷川だが、その後は竜王と名人を羽生から続けて奪取。羽生からの奪取が通算5期目の名人で、十七世名人の資格を得た。羽生とはタイトル戦で幾度となく顔を合わせ、2人の対局は同一対戦カード記録の歴代2位となる168局を数えている。

優雅な所作、凛とした対局姿勢は棋士の象徴とも言えるだろう。また、詰将棋の創作でも名を馳せている。江戸の名人には作品集を天皇に献上する習わしがあった時代もあり(途中で廃れる)、谷川は約200年ぶりに永世名人として図式集「月下推敲」を刊行した。
 
十七世名人となったが、谷川の現役生活はまだまだ続く。今後も切れ味のある将棋を指し、若手棋士の前に立ちはだかる姿を見せ続けてほしい。

さて、今年は谷川の持つ史上最年少名人の記録が約40年ぶりに注目されることになりそうだ。というのも、藤井聡太竜王がいよいよA級順位戦に参戦。1期目で挑戦権を得て名人を奪取すれば、谷川の持つ21歳2ヶ月の記録を更新することとなる。とはいえチャンスは1期しかなく、圧倒的な強さを誇る藤井といえども簡単ではない。事実、昨年度のB級1組順位戦では2敗を喫し、最終戦を勝つまで昇級が決まらなかった。ただ、これまでとは違い、同星はプレーオフとなるため、初参加による順位の不利が軽減されているのは大きいかもしれない。藤井が挑戦争いを先導することになるのは間違いなく、40年ぶりに史上最年少名人が更新されるのか、話題を呼ぶことになるだろう。

文=渡部壮大

この記事の全ての画像を見る

放送情報

銀河戦AIガイド 歴代決勝戦特集~第10期 羽生善治銀河 vs 谷川浩司王位
放送日時:2022年6月14日(火)10:20~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物