乃木坂46・中田花奈の「フレッシュさ」が作品にもたらしたもの

アイドルグループとしてトップを走る乃木坂46の中で、白石麻衣や齋藤飛鳥など女優として活躍しているメンバーも少なくない。そんな白石や齋藤と共に同じ1期生として乃木坂46を支えてきた中田花奈が初主演を務めた作品が2014年公開の映画『デスブログ 劇場版』だ。

衛星劇場の「真夏のホラー特集」として、7月9日(火)に放送される同作は、恋愛のことなどを匿名ブログにつづり始めた女子高校生が片思いの男子と交際を始めたころから起こる、ブログに書いたことに関係する不審な現象と、次第に疑心暗鬼になっていく姿をスリリングに映し出す青春ホラー作品。

同作で中田は主人公の前田瞳を熱演。引っ込み思案で恋に奥手、学校でも友人は3人しかいないといった地味なキャラクターである瞳を等身大で表現している。

(C)2014「デスブログ 劇場版」製作委員会

例えば、学校での友人たちとのシーンでは、引っ込み思案ゆえにイジられる役まわりで、いつも目線が下がっている自信無げな様子を。一方で、家での妹とのシーンでは生意気な妹に正面切って口げんかするなど、学校と家で"自分の出し方"が違うところが何ともリアルで、観る者に「こんな子いる!」と思わせ、作品世界と視聴者との距離を縮めている。

それを実現させているのは、中田のフレッシュな演技にほかならない。巧さや感情表現の豊かさではなく、初主演だからこそ出る「フレッシュさ」が作品の"作品っぽさ"を消し、何ともいえないリアル感を醸し出しているのだ。

演者は1人の人物を"演じる"にあたり、つい役柄のキャラクター性を重視して性格の特徴に縛られがちになってしまうが、登場人物を1人の人間として捉えるとコミュニティーごとに自己表現が変わるのが当たり前。

そんな細やかな人間描写が成り立っているのは、中田が「フレッシュ」だからこそ1人の人間を"演じる"のではなく、1人の人間として"居た"からではないだろうか。"演じる"ことを意識せず"居る"ことに専念するというのは「フレッシュさ」が不可欠であろう。

(C)2014「デスブログ 劇場版」製作委員会

そんな「フレッシュさ」は物語にも大きな影響をおよぼしている。物語では、瞳のブログに書いた人や物に異変が生じ、瞳は自意識過剰になり精神が不安定になっていくのだが、作中ではブログと発生する異変に高い関連性がうかがわれる表現はあるものの、直接的な関連性は描かれておらず、普通に考えると自意識過剰になる理由としては弱い。ともすれば、気が強い主人公であったらならば「関係ない!」と一蹴できてしまう程度。

だが、「イジられても返せない」「妹にも圧されてしまう」「怒りを相手にぶつけられない」といった中田が表現する瞳の心の脆弱さが、自意識過剰に陥ってしまい精神が不安定になることに説得力を与えている。

トップアイドルのメンバーながら、地味で内向的なキャラクターとして"居た"中田の「フレッシュさ」を恐怖と共に感じてみてほしい。

(C)2014「デスブログ 劇場版」製作委員会

文=原田健

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放送情報

真夏のホラー特集「デスブログ 劇場版」
放送日時:2019年7月9日(火)19:30~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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