ここ数年、シティポップのリバイバル的流行と共に脚光を浴びている"渋谷系"。1990年代、世界でも屈指の"レコ屋街"だった渋谷から発信され、フリッパーズ・ギター、オリジナル・ラブなど数々の有名アーティストを生んできたが、その中でも象徴的な存在だったのが、ピチカート・ファイヴだ。
昨年11月には最新ベストアルバム『THE BAND OF 20TH CENTURY:Nippon Columbia Years 1991-2001』が発売。日本コロムビア時代の名曲の数々がCDと7インチのアナログ盤(7inch BOX)に収録された同アルバムは、アートディレクター・信藤三雄氏手がけたジャケットデザインといい、新たにエディットやミックスを施した音源といい、その仕上がりは当時の洗練された印象のまま。2001年の解散から20年近くが経つ今も、カリスマ的な存在感を放っている。
渋谷系ムーブメントの中心的バンドとして一世を風靡したピチカート・ファイヴは、1984年に小西康陽を中心に4人組として結成。1988年から2年間はオリジナル・ラブの田島貴男が在籍するなど、2度のメンバー交代を経て、1994年以降は野宮真貴とのユニットに。1990年に加入した彼女が"3代目"ヴォーカリストだったことはファンならずとも有名な話だ。
艶やかで伸びのある歌声を持つミューズの加入により、天才的なソングライティング能力を覚醒させた小西は、ジャズやソウル、日本的シティポップを融合した唯一無二のサウンドを特徴に、「スウィート・ソウル・レヴュー」「東京は夜の七時」「ベイビィ・ポータブル・ロック」といったヒット曲を次々と生み出していく。
さらに、ピチカート・ファイヴを印象付けたのが、野宮のファッショナブルなルックだ。これまでにも、衣装やハイファッションな私物コレクションの展示を行っていたり、ファッション関連のエッセイを度々出版していたりと、ハイセンスの持ち主として知られている彼女。ピチカート・ファイヴ時代には、伝説のモデル・ツイッギーに代表されるレトロモダンな60年代スタイルや、アフロヘアが特徴的なソウルフルなスタイルを難なく着こなしており、そんな野宮の姿を写し取ったこだわりのアートワークを含めて、ポップアイコンとしての存在を確立させていった。
90年代にはアメリカデビュー、2度のワールドツアーを敢行。その後は、通称"ピチカート・ファイヴのお葬式"と呼ばれた2001年のラストライブをもってその歴史に終止符を打つことになるが、野宮は解散後もソロアーティストとして精力的な活動を行なっていく。
2013年からは、"世界中の渋谷系の名曲を新しいスタンダード・ナンバーとして歌い継ぐ"をコンセプトとした音楽プロジェクト「野宮真貴、渋谷系スタンダード化計画」をスタート。フレンチ渋谷系、ヴァカンス渋谷系、ホリデイ渋谷系...と、毎年テーマごとにシリーズ化された中で、数々のミュージシャンとコラボした同プロジェクトのツアー「野宮真貴、渋谷系を歌う。」は、この渋谷系ブーム再燃の火付け役といえるだろう。
3月12日(木)・13日(金)に開催が予定されていた最新ライブ「野宮真貴、還暦に歌う。~赤い口紅の女と黒いサングラスの男たち~」は、新型コロナウイルス感染拡大への対策に伴い残念ながら急遽一旦中止になってしまったが、2018年に開催された「野宮真貴、渋谷系を歌う。 -2018- 」が、3月12日(木)にフジテレビNEXTにてTV初放送される。
2016年のリオ・パラリンピック閉会式でも取り上げられたピチカート・ファイヴ時代の代表曲「東京は夜の七時」や、渋谷系のルーツを汲む名曲たちが、様々な趣向やアイデアを凝らした最新形のパフォーマンスによって鮮やかに蘇ったステージは必見だ。
選曲からファッションに至る構成の隅々まで、"元祖渋谷系の女王"たる所以が散りばめられた今回のライブ。その唯一無二の魅力を改めて味わいたい。
文=HOMINIS編集部
放送情報
野宮真貴、渋谷系を歌う。-2018-
放送日時:2020年3月12日(木)20:00~
チャンネル:フジテレビNEXT ライブ・プレミアム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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