事前番組として3月に「80年代女性アイドル伝説 feat.松田聖子」編を放送して好評を博した、飯尾和樹(ずん)とコムアイ(水曜日のカンパネラ)の異色コンビMCによる新番組『MUSIC JUNCTION』が、いよいよ4月から歌謡ポップスチャンネルでスタートする。その記念すべき第1弾として2回にわたり放送される、「日本のロック feat. 忌野清志郎」篇の収録に潜入した。
まずは、A面(1回目)の収録。冒頭にコムアイが忌野清志郎を「政治的な意見を曲にバンバン入れるイメージ。あと私、男の人の女装ではないメイクが好きなので、メイクがカッコいい印象」と語ると、「僕が小学生のころ、飯尾家には清志郎のガセネタが流れていましてね。おふくろが『この人の声いいでしょ?元TBSのアナウンサーなのよ』って」と、実家の珍エピソードを披露して、いきなり現場が大爆笑に包まれた。
そこから、飯尾に「清志郎のライヴがある日は一切仕事を入れない」と紹介されて「それは出任せ。仕事第一、2番目が清志郎です」と笑う、女優の松金よね子、清志郎を追いかけ30年も記事を書き続けた音楽ライターの今井智子、ニセ忌野清志郎としても人気で、「メイクすると自分でもそっくりで。でも歌い出すと全然似てないから、みんなずっこける」と、ほのぼの語るワタナベイビー(ホフディラン)のゲスト3名を迎え、日本のロックの創生期を振り返りながらトークを展開。戦後にジャズやブルースが日本に入ってきたこと、ビートルズが登場する1960年代には、グループ・サウンズや日本語ロックが生まれたことなど、歴史をおさらいした。
続いて、ゲスト陣が「私のロック体験」を告白。松金は青春時代の甘酸っぱいエピソードを、ワタナベイビーは、それまで(プロレスラーのアブドーラ・ザ・)ブッチャーやザ・シークに夢中だった少年が、一瞬にして現在の自分に変身した魔法のような出来事について、今井が自身をロックの虜にした昭和を象徴する家電について、思い入れたっぷりに語り合う。ディスコ世代には懐かしい"チークタイム"や、1970年代に一世を風靡した"ずうとるび"というワードに、平成生まれのコムアイが「?????」状態なのが面白かった。
小休止をはさんで、B面。ここから本題である忌野清志郎の魅力に、どんどん迫っていく。まずはプロフィールをたどりながら、ゲスト陣が清志郎ファンになったきっかけや、本人と初めて会った時の印象などを、愛情と情熱超満載でトーク。松金が持参した清志郎の通常とは違うレアなサイン、今井が「インタビュアー泣かせだった」と振り返る取材時のこぼれ話、実際に親交が深かった清志郎とワタナベイビーの馴れ初め話に、おそらく初公開と思われる秘蔵写真、さらには、清志郎のイタズラ心や粋な心遣いも伝わるニセ清志郎誕生秘話など、ファン垂涎もののお宝ネタが次から次へと飛び出してくる。ニセ清志郎の写真を見たコムアイとワタナベイビーとの「ホクロも一緒ですね」「これは僕のホクロ」のやり取りで、大爆笑が起こったり、飯尾が清志郎と関根勤との共通項(?)を指摘したり、現場は終始、和気あいあいで、それを見ているこっちも楽しくなってくる。
そして、番組の核心と言える、ソングライターとして、ヴォーカリストとして、ライヴ・パフォーマーとしての忌野清志郎の素晴らしさを、ゲストそれぞれが個別の曲や歌詞、歌唱フレーズなどを例に挙げながら熱弁。さすがは清志郎の"ダイハード・ファン"を自認する3人だけあって、なんとも深く鋭い考察ぶりで、音楽ファンならなるほどと膝を打つ話ばかり。清志郎と2曲共作したことがあるワタナベイビーが明かした、共作に至るまでの過程とセッション時の振り返り実況は、ちょっと神がかっている感じで鳥肌モノだ。
もちろん、原発や核の問題にも踏み込んだ"社会風刺ロック・アーティスト、忌野清志郎"も、お題に。発売中止の憂き目に遭った『COVERS』を作った本人の真意や、世間の受け止め方について、これもまた深く鋭く掘り下げていく。松任谷由実や桑田佳祐を引き合いに出して、「(二人と比較すれば自分は)売れていないから」と言っていたという清志郎が、"ロック表現"と、また"エンターテインメント"と真摯に、必死に向き合っていた姿が浮き彫りになるこのくだりは、じんわりと胸に沁みるものがあった。
オンエアにどこまで入るかわからないのだけど、途中で実は同い年であることに気付いた、ワタナベイビーと飯尾の同級生トークや、飯尾が最後に急に思い出して語った、ウド鈴木が清志郎と偶然会った時のエピソードも笑えたし、とにかく楽しくて、役に立って、ぐっと来る収録だった。『MUSICJUNCTION』第1弾に、乞うご期待!
取材・文=鈴木宏和
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