羽田空港で歌う!松田聖子、伝説の「ザ・ベストテン」初ランクインの裏側とは

誰もが知る松田聖子という稀代のアイドルには、広くは知られていない"隠れた伝説"がいくつも存在する。1980年4月1日、新人らしからぬ伸びやかな歌声を響かせた「裸足の季節」でデビューすると、あっという間にアイドルシーンの頂点に立つ。3作目の「風は秋色」からは、オリコンシングルチャート24作連続1位という当時としては空前の記録を打ち立てた。その金字塔には、予想だにしなかった"奇跡"を何度も呼び込んでいる。

1970年代から1980年代にかけて、音楽番組の頂点に立っていたのがTBSの「ザ・ベストテン」だった。本当にヒットしている曲だけが並び、もちろん、聖子も毎週のようにランクインしていた。そんな聖子の、記念すべき初ランクインは1980年8月14日のことだった。2作目の「青い珊瑚礁」が第8位で初登場することになると、この日、札幌の仕事を終えて羽田空港に到着する予定であることがわかる。番組プロデューサーの山田修爾は、聖子の記念すべき初ランクインを盛り上げるために、羽田空港や全日空と協議を重ね「飛行機のタラップを降りてくるところを中継」というプランを了承させた。

映画「プルメリアの伝説 天国のキッス」に出演した松田聖子

(C)1983 東宝

ところが、本番当日、仙台付近の風の影響で予定より5分ほど早く到着しそうになる事態に...。山田は、全日空の広報に「いいですか!スピードを落としてくださいってお願いしているんです!」「飛行機という乗り物は、スピードをつけているから空を飛べるんです。スピードを落としたら‥‥」「何とかなりませんか‥‥お願いします!」と絶叫したそうだ。(山田の著書「ザ・ベストテン」により)

今では信じられないやり取りが繰り返されたが、風の影響もあってか、結果的に番組がベストとする時間に奇跡的に到着した。ファンの間で、今なお"神回"と呼ばれる理由がそこにある。ただし、そんな緊迫の事態は知る由もなく、司会の黒柳徹子から「初登場のご感想を」と聞かれると、聖子は緊張気味に「とってもうれしいです」と答えている。

当時、若手デイレクターだった演出家の遠藤環は、今年3月に上梓した拙著「1980年の松田聖子」の取材にて、「亡くなった松宮一彦アナウンサーが『追っかけマン』として中継を担当したんだけど、あらゆる事態を想定して、台本にもない下調べを入念に行なっていた。そのため飛行機が着陸する前から聖子がタラップに姿を現すまで、見事なしゃべりでつないでくれた」と、コメントしている。

ちなみに、遠藤は聖子が初めて「青い珊瑚礁」で1位になった回の担当デイレクターとして、福岡の実家からお弁当を作ってもらい、かの有名な「お母さ~ん!」の絶叫を引き出している。その翌週に2週連続で1位を獲得すると、これが引退前の最後の出演となった山口百恵から花束が渡されるという歴史的な"儀式"が行われている。

そんな数々の"聖子伝説"の中でもお宝映像である羽田空港の初歌唱を収めた回がTBSチャンネル2にて放送されるのは、ファンならずとも押さえておきたい貴重な機会であろう。

さらに同チャンネルでは聖子の2作目の主演映画『プルメリアの伝説 天国のキッス』(1983年)の放送も控えている。ハワイを舞台に中井貴一とのラブロマンスが展開するこの映画。女優・聖子を知る貴重な機会となりそうだ。

文=石田伸也

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放送情報

ザ・ベストテン(1980年8月14日放送)
放送日時:2020年11月3日(火)21:00~
映画「プルメリアの伝説 天国のキッス」
放送日時:2020年11月7日(土)21:00~
チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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