アイドル戦国時代と呼ばれて久しい中、アイドルグループたちの冠番組は数多く存在する。とはいえ、30分間まるごと一人のアイドル歌手が単独出演する音楽番組は珍しいだろう。さすがに30分以上のコンテンツを単独で成立させるだけの幅と奥行を持つアイドル歌手は限定されるし、番組を構成するのも容易ではないからだ。
だが、アイドル黄金期ともいえる1980年代には、そんな芸当をサラっとやってのけたスーパースターがいた。当時人気絶頂だった松田聖子もその一人で、1983年に放送されたフジテレビの伝説的な音楽番組「ザ・スター松田聖子~振り向けば...聖子~」が当時大変な好評を博した。
1981年から1983年にかけてフジテレビにて放送された「ザ・スター」は、毎月1組のアーティストをマンスリーゲストとして迎えて、歌とトークを4週にわたって披露した音楽番組。「スター」という冠にふさわしく、美空ひばりや北島三郎、小林旭、西城秀樹、野口五郎といった当時のビッグネームがこぞって出演したが、美空ひばりと松田聖子は特例として5週連続でオンエアされた。
そしてこの度、1983年3月に5週連続放送された「ザ・スター 松田聖子 ~振り向けば...聖子~」が、彼女の誕生日にあたる3月10日(水)より、フジテレビTWOにおいてオンエアされることになった。さらにその放送に先がけ、全5回のダイジェスト映像にファン必見のコーナー映像をプラスしたスペシャル版「The・Star・SPECIAL 振り向けば...聖子」も2月10日(水)に放送される。
スペシャル版では、「ザ・スター 松田聖子」の貴重な映像を80分に凝縮。当時番組内で大人気だったコーナー「セクシー聖子のナイトナイトジョッキー」を含め、21歳当時のフレッシュな映像がたっぷり見られるのは嬉しい。
今回、番組内で歌唱する楽曲は、デビュー曲「裸足の季節」のほか、シングルで初めて松本隆を作詞に起用した「白いパラソル」、松任谷由実が呉田軽穂名義で楽曲提供した「赤いスイートピー」や「渚のバルコニー」、また主演映画『プルメリアの伝説 天国のキッス』(1983年)の主題歌であり、細野晴臣が作曲を手がけた放送当時の最新曲「天国のキッス」などの18曲がラインナップされている。
また、シングルのヒットナンバーばかりでなく、名盤とされるアルバム収録曲も含まれている点でも貴重な映像と言える。
例えば、松本隆が作詞し、大滝詠一がA面5曲を作曲するなど、伝説のロックバンド・はっぴいえんどの元メンバーたちが参加した4thアルバム『風立ちぬ』からは、「黄昏はオレンジ・ライム」(作・編曲はB面の多くのアレンジを担当した鈴木茂)をピックアップ。細野晴臣の参加でも話題を集めた6thアルバム『Candy』からは、「星空のドライブ」(作曲は財津和夫)の歌唱シーンが含まれている。
特に、オリジナルアルバムの中でも最高傑作との評価もある5thアルバム『Pineapple』のフィナーレを飾った「SUNSET BEACH」(作曲は来生たかお)は、抒情的で力強い歌詞を聖子が情感たっぷりに歌い上げるラブバラードの傑作。この1曲を聞くだけでも価値があるほどインパクト抜群のナンバーだ。
どうだろう、こう並べてみると、聖子ファンならずとも、豪華なクリエイター陣の名曲が当時の映像で楽しめる、魅惑のラインナップと言えるのではないか。
現在も歌だけでなく、バラエティやCMで幅広い活躍を見せているが、彼女が80年代当時いかに光り輝いていた大スターであったのか、その高い実力を証明する今回の特集は、現代の若者たちにも大いに見てほしいと思う。
文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)
放送情報
The・Star・SPECIAL 振り向けば…聖子
放送日時:2021年2月10日(水)21:40~
ザ・スター 松田聖子 ~振り向けば…聖子~
放送日時:2021年3月10日(水)22:30~
チャンネル:フジテレビTWO ドラマ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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