大黒摩季が活動を通して見せる強い信念

多くのアーティストが「自分の存在意義は何なのか?」という命題に向き合わざるを得なかったコロナ禍の2020年。大黒摩季の活動の在り方は、そんな状況下にあって、いかに自分のやれることを全うするかという強い信念が貫かれていた。医療関係者への感謝の気持ちを込めた「ありがとう ~ヒーロー&ヒロインへ~」や、外出自粛で巣ごもり生活を余儀なくされた人たちへのリラックスソングとして制作した「Stay Home」を、自身のYouTubeチャンネルで急遽配信するというフレキシブルな活動をはじめ、3月から10ヶ月連続の新曲リリースを展開。秋からは感染対策を徹底したうえで全国14ヵ所の弾丸ツアーをまわった。そんな大黒の活動の根源にあるのは、「自分以外の誰かのために」という強い想いだ。

1992年に「STOP MOTION」でメジャーデビューを果たした大黒が世間に認知されたのは、同年CMソングに抜擢された2ndシングル「DA・KA・RA」だった。当時の大黒はほぼ無名の新人だったが、CMと共に話題になった「DA・KA・RA」で初のミリオンヒットを記録。ここから大黒摩季の快進撃がはじまった。1993年の「チョット」「別れましょう私から消えましょうあなたから」に続く「あなただけ見つめてる」を皮切りに、毎年チャートにミリオンヒットを送り込んでいく。そんな大黒のトップアーティストとしての地位を不動のものにしたのは、1995年にリリースされた10枚目のシングル「ら・ら・ら」だった。中居正広の主演ドラマ『味いちもんめ』の主題歌に起用された「ら・ら・ら」は自身最大のヒットを記録。恋に悩み、結婚を意識しながら、恋人のために健気にがんばる20代女性の心境をリアルに綴る大黒の歌は、同時代の女性シンガーとは一線を画すオリジナリティを放っていた。

J-POP史に燦然と輝く記録を打ち立てた大黒だったが、その活動は順風満帆なだけではなかった。2010年には子宮疾患の治療のために活動休止を発表すると、本格的な活動再開は6年後の2016年になる。20代から40代へ。ライフステージが変化するなかで、大黒は自身の病気のことや母の介護経験についても包み隠さず公表し、時にその想いを楽曲にも込めてきた。やがて大黒摩季は、同世代の女性に共感されるというデビュー当時のイメージから、いまを生きるすべての人にエールを贈る、そんな存在へと変わっていったように思う。

逆風こそ、ちからに変える。そんな大黒摩季の真価が発揮されたのが、冒頭に書いたコロナ禍の活動であり、昨年12月23日にリリースされたアルバム『PHOENIX』を軸にした全国ツアー「MAKI OHGURO 2020 PHOENIX TOUR ~待たせた分だけ100倍返しーっっ!!!~」だろう。そのファイナルとなった12月18日のパシフィコ横浜のステージでは、「DA・KA・RA」「夏が来る」「あなただけ見つめてる」「ら・ら・ら」など、代表曲の数々が惜しげもなく披露されたが、なんと言っても深く心を揺さぶるのは最新アルバムの楽曲たちだ。ロック、サーフミュージック、ゴスペルなど、幅広いジャンルを表情豊かに乗りこなす大黒の歌には、こんな時代だからこそ伝えたい大きな愛が溢れていた。さらにはゲストにアコースティックギターの光永亮太、大黒公認のものまねアーティスト荒牧陽子&翔子や、ラテンポップの貴公子・當間ローズを迎えた豪華共演も見どころのひとつ。全18曲にわたり、大黒摩季がその人間力をもって作り上げる、笑いあり、涙あり、ロマンスありのステージは、極上のエンターテイメントこそ私たちが現実を生き抜くためのエネルギーになることを再確認させてくれる。23歳の歌手デビューから約29年。昨年51歳を迎えた大黒摩季はいま、最高にエネルギッシュにシンガーとして自身の命を燃やし続けている。

文=秦理絵

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放送情報

MAKI OHGURO 2020 PHOENIX TOUR〜待たせた分だけ100倍返しーっっ!!! 〜 ファイナル パシフィコ横浜公演<Special Edition>
放送日時:2021年4月25日(日)20:30~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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