吉川晃司 我が道を行くメンバーが団結した白熱のステージ

写真撮影:平野 タカシ
写真撮影:平野 タカシ

吉川晃司のステージには「表現する」というよりも「体現する」という言い方がしっくりくる。彼の生き方と直結した曲がたくさん演奏されるからだ。彼が日々闘い続けているからこそ、アグレッシヴな曲の輝きが増していく。「Live is Life」、つまり「ライブこそが人生」という意味のタイトルは今回のツアーにもぴったりだ。7月21日の日本武道館公演でも彼は気迫あふれるステージを展開した。今回のツアーの大きな魅力となっているのはバンドサウンドである。彼はソロ・アーティストだが、バンドへの強いこだわりを持っている。それは彼がロックを軸とした音楽を展開しているから、そして人間のパワーは人間によって引き出されることをよく知っているからだろう。ここでは「吉川晃司にとってバンドとは?」というテーマを設定して、この夜の模様をレポートしていこう。

楽しむことと闘うことが両立したステージ

5人のメンバーのうち、3人が昨年のツアーからの参加なので、今回のメンバーは結成2年目のバンドというニュアンスに近い。そのメンバーについて、吉川は「ロック色を濃くして、我が道を行く人たちにお願いしました」と語っていた。ギターの生形真一はNothing's Carved In Stoneと活動休止中のELLEGARDENという二つのバンドのリーダーでもある。ベースのウエノコウジは元THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのメンバーであり、現在はthe HIATUSを始め、幅広い活動を展開している。吉川と同じく広島出身であり、ステージ上でも二人の会話では広島弁が飛び出す。ドラムの湊雅史は元DEAD ENDのメンバーで、その後、氷室京介、奥田民生などのツアーにも参加していて、吉川と同い年である。キーボードのホッピー神山は吉川とは80年代からの付き合いで、近年、吉川のツアーに参加し続けている。ギターのEMMAこと菊地 英昭は昨年のツアーはTHE YELLOW MONKEYの再結集に伴って不参加だったが、ここ10年ほど吉川のツアーに参加している。

今回のツアーは新作のリリースに伴ったものではない。7月から9月にかけてのツアーということで、夏の曲がたくさん選曲されている。オープニング・ナンバーの『サバンナの夜』も夏が舞台の曲。エネルギッシュな歌と躍動感あふれる演奏によって、会場内が熱気に包まれていく。『LA VIE EN ROSE』、『ポラロイドの夏』など、80年代に発表された夏のナンバーが新鮮に響いてきたのは、今の吉川の歌声とバンドの骨太なサウンドとダイナミックなグルーヴがあるからだろう。『TARZAN』『SAMURAI ROCK』『IMAGINE HEROES』など、EMMAと生形という二人の個性的なギタリストのギター・バトルをフィーチャーした曲も数多く選曲されていて、二人の火花を散らす演奏もスリリングだった。『The Gundogs』『GOOD SAVEGE』では吉川もギターを持って、トリプル・ギターが炸裂。お互いがお互いをリスペクトしながらも、馴れ合わずに、一歩も引かない演奏を展開。楽しむことと闘うこととが両立したステージだ。

吉川にとってバンドとは「ライバル」であり、「同志」

ステージを踏むたびにバンドサウンドも進化している。個々のメンバーが「合わせる」のではなくて、存在感のある音を奏でて、ゴツゴツぶつかりあいながらスリリングなアンサンブルを形成することでダイナミズムが生まれていく。吉川にとってバンドとは「仲良し」ではなくて、「ライバル」であり、「同志」であり、鼓舞しあう存在なのだろう。

アンコール時のMCで、喉のポリープが見つかったため、いずれポリープ除去の手術を受ける予定であることも吉川本人の口から発表された。一瞬、会場内がざわつく場面もあったが、不安や心配を払拭すべく、パワフルな歌声を披露した。吉川はこれまでも骨折したこと数知れず、様々なケガを乗り越えて、傷だらけになりながら、33年間走り続けてきた。アンコール2曲目の『Over The Rainbow』を歌う前のMCではこんな発言もあった。

「ポセイドン・ジャパンに書いた曲で、オリンピックのテーマソングなんですが、自分のテーマソングでもあるんですよ。2020年までこの曲に恥じない人生を送らなきゃいけない」とのこと。『笑顔の再会を』という挨拶に続いてのアンコールラストの『せつなさを殺せない』のエンディングではトレードマークとなったシンバルキックでのフィニッシュ。ライブで完全燃焼したのか、何度かやり直す場面もあったが、そのたびにメンバーもフィニッシュの演奏を繰り返していく。こうしたバンドの柔軟な対応からはメンバーとの絆の深さが見えてきた。これまで何度も立ち上がってきた吉川らしいエンディングとなった。困難を乗り越えるたびに、彼の歌もさらに強靱になっている。逆境こそが彼のエネルギー。次に再会する時には、きっとさらに大きな笑顔をもたらしてくれるだろう。

※この記事はライブレポートのため、放送に含まれない楽曲も紹介しています。

Writer:長谷川誠

※この記事はヨムミル!ONLINEの転載になります。

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放送情報

吉川晃司 LIVE 2017 “Live is Life”

放送日時:2017年9月30日(土)21:00~

チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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