妻や娘との関係に悩む会社員の男の家に強盗が押し入るニコール・キッドマンとの共演作『ブレイクアウト(2011)』
ケイジのフィルモグラフィーでも目立つのがサスペンス映画である。突然事件に巻き込まれ、追い詰められる姿は彼のトレードマークと言ってよい。このジャンルは、家族とのすれ違いなどサブプロットが重要な要素となるが、夫や父の苦悩をリアルに演じるケイジの演技力は大きな魅力と言えよう。
『ブレイクアウト』(2011年)はニコール・キッドマンとの共演作で、妻や娘との関係に悩む裕福な会社員カイルという役どころ。強盗に娘を誘拐されたことから、家族に隠していたカイルの真実が発覚する。オスカー俳優が夫婦を演じた本作は、サスペンスだけでなく家族再生のドラマでもあった。一方の『トカレフ』(2014年)は、何者かに娘を誘拐された元ギャングの物語。ケイジ演じるポールは、誘拐された娘を取り戻すためかつて因縁のあったロシアン・マフィアに殴り込む。家族愛や銃社会の怖さを描いた作品だが、なりふり構わず突っ走るケイジがドラマを盛り上げた。
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『ヴェンジェンス』(2017年)は法で裁けない卑劣なレイプ犯に鉄槌を下す刑事の物語。軍出身者という設定で、表情ひとつ変えずに黙々と獲物を仕留めていく、いつもとひと味違う怖いケイジが堪能できる作品だ。
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エイリアンとの武術戦を描いたコミックタッチのSFアクション『アースフォール JIU JITSU』(2020年)では、柔術エイリアンと日本刀風の剣を使ったソードバトルを展開。ツッコミどころもある作品だが、フランク・グリロ、トニー・ジャーらアクションスターに囲まれて、生き生きと暴れるケイジの剣さばきを楽しむことができる。
(C) 2020. LBE JIU JITSU AVC LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
異色作では『ウィリーズ・ワンダーランド』(2021年)も負けてない。こちらは廃墟と化したテーマパークで機械仕掛けの怪物たちと死闘を繰り広げる痛快アクション。ヒゲにキャラT姿のケイジは、返り血ならぬ返りオイルで真っ黒になりながらメカアニマルを次から次にぶちのめす。架空の街サムライタウンで壮絶バトルを繰り広げる園子温監督の『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』(2021年)もそうだが、カルト枠の作品でもしっかりケイジ節を披露する生真面目さはうれしい限りだ。
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いよいよ2023年には、役に飢えている俳優ニコラス・ケイジを彼自身が演じる『マッシブ・タレント』(2022年)の日本公開が決定。さらに、復讐をテーマにした本格西部劇『The Old Way(原題)』(2023年)がまもなく完成し、A24のコメディ『Dream Scenario(原題)』(2024年)への出演決定のほかにも数々のプロジェクトが始動中。還暦を前に、ついに完全復帰を果たしたニコラス・ケイジから目が離せない!
文=神武団四郎
神武団四郎●映画ライター。「映画秘宝」「MOVIE WALKER PRESS」「シネマトゥデイ」などへの寄稿、パンフレットの執筆、編集など。編書に「別冊映画秘宝 絶対必見!SF映画200」(洋泉社)など。監修書に「テック・ノワール ジェームズ・キャメロン コンセプトデザイン画集」(玄光社)、「メイキング・オブ・007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(玄光社)など。ゴジラよりコング派。









