イ・ジュニク監督が描く韓国史上有名な「王と息子」の悲劇を紐解く歴史大作 『王の運命―歴史を変えた八日間―』

韓国の映画賞を総ナメにし、大ヒットを記録した『王の運命―歴史を変えた八日間―』
韓国の映画賞を総ナメにし、大ヒットを記録した『王の運命―歴史を変えた八日間―』

■朝鮮第21代国王・英祖が実の息子を米びつに...彼らに何があったのか?

映画やドラマを通じて、日本でも多くの人が興味を持つようになった韓国の歴史。特に14世紀末から20世紀初頭にかけて27人の王が国を治めた朝鮮王朝は様々な作品を生み出してきた。『王の運命―歴史を変えた八日間―』(2015年)は、ドラマ「イ・サン」でもおなじみの第22代王・正祖の父である思悼世子と、祖父で第21代王の英祖との葛藤を描き、韓国で観客600万人以上を集めた大ヒット作だ。

1762年。父である王・英祖(ソン・ガンホ)を殺そうとした罪に問われた世子(ユ・アイン)は自害しようとするが失敗。その姿を見ていた英祖は息子を米びつに閉じ込めるよう、臣下たちに命ずる。日を追うごとに衰弱していくなかで思悼世子は葛藤に満ちた父との日々を回想していく。幼き頃は聡明さで父を喜ばせたが、成長するにつれて勉学よりも美術や武芸を愛するようになった世子の行動は、徐々に英祖の悩みの種となっていった。それでも、英祖は後継である世子に国政を学ばせようとしたのだが...。

韓国史の大きな謎ともされる「米びつ事件」を、新たな視点と大胆な解釈で描き出す
韓国史の大きな謎ともされる「米びつ事件」を、新たな視点と大胆な解釈で描き出す

(c) 2015 SHOWBOX AND TIGER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

父に対する怒りを抑えきれなくなった世子が剣を持って飛び出していくシーンから始まるこの映画は、王殺害未遂の罪によって米びつの中に入れられた彼が死へと近づいていく現在と、父子の関係が徐々にこじれていった過去を行き来しながら「彼らはなぜ運命の瞬間へと追い込まれていってしまったのか?」という疑問に迫っていく。

監督は朝鮮王朝の歴代王の中でも暴君として名高い燕山君と最下層の芸人たちの人間関係を描いた『王の男』(2005年)で大成功を収めて以降、『空と風と星の詩人~尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯~』(2015年)、『金子文子と朴烈』(2017年)、『茲山魚譜 チャサンオボ』(2021年)など、現代的な視点を交えた独自の時代劇を手掛けてきたイ・ジュニク。韓国では知らぬ人のいないほど有名な王と息子の悲劇を取り上げた今作では、観客の持つイメージを裏切らないよう、これまでになくシリアスなアプローチを選んだという。

英祖が思悼世子に対して行った過酷な仕打ちについては「臣下たちとの権力関係の中で王権を守るために思悼という人物が犠牲になった」という見方と、そうした権力関係以前に、思悼という人物が持っていた狂気にフォーカスを置き、「息子ではなく孫に王位を譲るため、王が米びつに閉じ込めて殺した」という2つの見方があるという。イ・ジュニク監督はこうした見解を踏まえながら、父と子、そして、彼らを取り巻く女性たちを含めた家族の関係に焦点を当てて、歴史の中の「なぜ」を解き明かそうとしたという。時を重ねるにつれて変化していく2人の関係を丁寧に追っていくので、歴史的な背景をそれほど知らなくても十分に引き込まれる。また、世子と息子サン(後の正祖)という「もう一組の父子」の関係も哀切に描かれている。

■歴史的な悲劇を描いたドラマであると同時に、誰もが身近に感じられる家族の物語

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放送情報

王の運命―歴史を変えた八日間―
放送日時:2023年4月9日(日)13:15~、22日(土)21:00~
チャンネル:スターチャンネル2

(吹)王の運命―歴史を変えた八日間―
放送日時:2023年4月18日(火)19:45~、26日(水)23:10~
チャンネル:スターチャンネル3

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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