イ・ジュニク監督が描く韓国史上有名な「王と息子」の悲劇を紐解く歴史大作 『王の運命―歴史を変えた八日間―』

わかり合えない父子の葛藤を、名優ソン・ガンホとユ・アインが演じた
わかり合えない父子の葛藤を、名優ソン・ガンホとユ・アインが演じた

(c) 2015 SHOWBOX AND TIGER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

朝鮮王朝の王の中で、最も在位期間が長く、名君として知られる英祖の40年を、特殊メイクを駆使して演じ切ったのは、日本でもおなじみの名優ソン・ガンホ。これまでの作品で見せてきた彼独特のユーモラスな口調をほとんど使わず、王としての威厳を見せた。イ・ジュニク監督は撮影中、「ソン・ガンホっぽい演技をしないように」と言い続けたという。待望の息子の誕生に心躍らせていた英祖が、その期待の大きさゆえに息子を責めるようになり、徐々に失望していく姿が胸を打つ。

偉大な父の期待に応えられないもどかしさに押しつぶされるかのように、少しずつ常軌を逸していく世子をエネルギッシュに演じているのはユ・アイン。雨の中、父のもとへと向かう冒頭から無念の死へと一気に駆け抜ける力強い演技によって青龍映画賞の主演男優賞に輝いた。2015年は本作に加え、悪辣な財閥の御曹司に扮した『ベテラン』も封切られて共にヒットし、映画俳優としての存在感が光った年となった。

父と子を取り巻く女たちの姿にも焦点を当てている
父と子を取り巻く女たちの姿にも焦点を当てている

(c) 2015 SHOWBOX AND TIGER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

夫である世子への愛情を持ちながらも息子を守ることを選ぶ恵慶宮役のムン・グニョンや、夫と息子の板挟みになる暎嬪役のチョン・ヘジンも好演。王にも強い影響力を持つ先々代王妃に扮したキム・ヘスクの貫禄ある演技にも圧倒される。父である世子への過酷な仕打ちを悲しむ息子イ・サン(後の正祖)を力強く演じた子役イ・ヒョジェに続き、ラストでは成人したサン役でソ・ジソブも特別出演し、父への切ない思いを凛々しく見せている。8年前の作品だけに、現在活躍中の俳優の若き日の姿が見られるのも楽しい。『パラサイト 半地下の家族』(2019年)でソン・ガンホの娘を演じたパク・ソダムが英祖に見初められ、世継ぎをもうける女官役で登場。また、世子との関係をさらに悪化させる原因を作る英祖の若く聡明な妃にドラマ「サイコだけど大丈夫」のソ・イェジが扮し、特有の低く魅力的な声を響かせている。

謎に包まれた出来事を、父と子の感情の行き違いの積み重ねのなかで見せる『王の運命―歴史を変えた八日間―』。歴史的な悲劇を描いたドラマであると同時に、誰もが身近に感じられる家族の物語であるところが興味深い。

文=佐藤結

佐藤結●映画ライター。韓国映画やドキュメンタリーを中心に執筆。「キネマ旬報」「韓流ぴあ」「月刊TVnavi」などの雑誌や劇場用パンフレットに寄稿している。共著に「『テレビは見ない』というけれど エンタメコンテンツをフェミニズム・ジェンダーから読む」(青弓社)がある。

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放送情報

王の運命―歴史を変えた八日間―
放送日時:2023年4月9日(日)13:15~、22日(土)21:00~
チャンネル:スターチャンネル2

(吹)王の運命―歴史を変えた八日間―
放送日時:2023年4月18日(火)19:45~、26日(水)23:10~
チャンネル:スターチャンネル3

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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