『クルエラ』の見どころは、なんといってもエマ・ストーンが着こなす衣装の数々。全部で47着も用意されているが、なかでも圧巻なのはバロネスのショーにクルエラが乗り込んでくる時の衣装。白いドレスがメラメラと燃え上がり、その下から赤のドレスが出てきて集まった人々を仰天させる。これはさすがにドレスを本当に燃やすわけにはいかず、特殊効果が使われているが、短いシーンながらVFXで何度となくシミュレーションを行い完成させた渾身の衣装だ。もう一つの目玉であり、作るのが大変だったというのは、クルエラが車の上に立って登場する際のフリルたっぷりのド派手なスカートだ。衣装担当のジェニー・ビーヴァンによれば、393メートルのオーガンジーから5060枚ものフリルの布を作ってアルバイト学生たちの手作業で縫い付けられたとか。
ビーヴァンは、『眺めのいい部屋』(1985年)と『マッド・マックス 怒りのデスロード』(2015年)の2回、アカデミー賞の衣装賞を受賞しているイギリスの人気デザイナーだ。ビーヴァンは、クルエラはもちろん、バロネスの衣装も担当。彼女のために全部で33着が用意されたが、バロネスがクルエラの燃えるドレスに驚く時の白のゴージャスなドレスの撮影は、ウエストを締め付けるためのロープを持つ人がいて「撮影中はまるで拷問だった」という。食事も大変なら座ることも難しかったそうだ。
エマ・トンプソンが締め付けるドレスで苦労すれば、エマ・ストーンが苦労したのはクルエラならではの「高笑い」。他人がいるところでは練習ができなくて、バスルームでシャワーを出しながら練習したとか。その難しさに比べれば、アメリカ人のエマ・ストーンが「全編イギリス英語でしゃべるための練習なんて大したことじゃなかった」という。
アニメ版「101匹わんちゃん」でのクルエラは、ダルメシアンの子犬を集めて毛皮のコートを作ろうとするという怖い女。彼女を主人公にした実写映画『101』(1996年)と続編の『102』(2000年)では、アカデミー賞の候補に上がること8回の大女優グレン・クローズがクルエラを演じている。クローズは、エマ・ストーン版『クルエラ』には製作総指揮として参加し、『102』のさらなる続編にも意欲を見せている。
観客には見せない作り手の苦労の数々を見つけるのも映画を観るお楽しみの一つ。そして、クルエラの知られざる出生の秘密は?贅沢で華やかな衣装や1970年代音楽もお楽しみに!
文=渡辺祥子
渡辺祥子●1941年生まれ。毎年アカデミー賞の受賞予想のクイズをやっていて、出る結論は「見ないで推量する」がイチバン。つい好きな俳優や監督、好きな映画を挙げてしまう私は20数年連敗!日本経済新聞、週刊朝日、ぴあなどで映画評を執筆。
放送情報
クルエラ
放送日時:2023年5月6日(土)21:00~、9日(火)15:00~
チャンネル:スターチャンネル1
(吹)クルエラ
放送日時:2023年5月7日(日)21:00~、11日(木)15:00~
チャンネル:スターチャンネル3
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