■監督の挫折経験から生まれた、「格闘技」のような映画
「ラ・ラ・ランド」(2016年)、「バビロン」(2022年)のデイミアン・チャゼル監督は、高校時代にジャズ・ドラマーを志し練習に打ち込みながらも挫折した。その彼が無名に等しかった28歳の頃に撮影した「セッション」(2014年)は、音楽を志す者が持たなければならない覚悟が描かれる。
名門音大へ入学し、ドラマーとしての成功を夢見るニーマン(マイルズ・テラー)と、容赦なく手を出し、物を投げつけるイジメ同然の指導で演奏技術を叩き込む鬼教師フレッチャー(J・K・シモンズ)。ミュージシャンが「セッション」するように2人が衝突し合い、ニーマンの才能が磨かれていく。全身全霊でドラムを叩く若者と、それを睨みつけ、罵倒する教師の対峙は「格闘技」のような激しさだ。
チャゼル監督は自らの経験を重ね合わせ、「最高の音楽を極めるために払われる犠牲、肉体的な苦痛を描きたかった」と話している。心ではなく、肉体のぶつかり合いで成長する過程を描いた音楽映画は斬新で珍しい。
主人公はニーマンだが、観る側にとってより印象に残るのはフレッチャーのほうだろう。演じたシモンズはサム・ライミ監督の「スパイダーマン」3部作などで脇を固めるバイプレーヤー。チャゼルの脚本に魅了され製作を担当したジェイソン・ライトマンが、「JUNO/ジュノ」(2007年)など自身の監督作の常連だったシモンズを推薦し、起用された。
シモンズは、才能を開花させるために相手を破滅ギリギリまで追い詰める男を体現し、アカデミー賞助演男優賞に輝く。脚本を読み込んだシモンズは「フレッチャーの哲学は理解できる。むしろ感心さえする」と語ったそう。もちろん彼は声を荒らげ、暴力を振るうような人ではないが、強面と黒シャツ姿、鍛えられた二の腕は役柄の迫力にぴったり。
放送情報【スカパー!】
セッション
放送日時:2023年3月11日(土)23:30~、26日(日)14:30~
チャンネル:スターチャンネル1
(吹)セッション
放送日時:2023年3月14日(火)23:00~、21日(火・祝)14:00~
チャンネル:スターチャンネル3
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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