■「女子高って本当にこうなのか?」男子に妄想を抱かせる夢物語
とはいえ、本作で最も輝いているのはフィービーだろう。他愛がないにもほどがある話が、「私立の女子校って本当にこうなのか?」と男子に際限のない妄想を抱かせる夢物語にまで昇華されているのは、彼女の存在あってのもの。本作および「グレムリン」(1984年)でアイドル女優の頂点に立った彼女は、1984年に「ハーパーズ バザー」誌で最も美しい10人の女性に選ばれた。
しかし日本での人気はそれ以上だったかもしれない。「スクリーン」と「ロードショー」という二大洋画雑誌では常に表紙や付録のポスターを飾り、アニメにもなったまつもと泉のラブコメ漫画「気まぐれオレンジ☆ロード」のヒロイン、鮎川まどかのモデルになった。映画コメンテーターのLiLiCoの芸名は、テレビシリーズ「フィービー・ケイツのレース」(1984年)でフィービーが演じた役名から取られているそうだ。「レース」といえば、後藤久美子が主演したジェットコースタードラマ「もう涙は見せない」(1993年)は事実上、同作の翻案作だった。
そんなフィービーだったが、実力派俳優ケヴィン・クラインと1989年に電撃結婚。1991年に長男オーウェン・クライン(現在、映画監督として活動)が生まれた後は女優業から徐々にフェードアウトし、長女グレタ(現在はシンガーソングライター、フランキー・コスモスとして活躍)を出産した1994年に主演した「プリンセス・カラブー」を最後に、事実上の引退生活に入ってしまう。現在はアッパー・イーストのアパートと別荘と行き来しながら、所謂「セレブ妻」としての生活をエンジョイしている。
そんな中、例外的に女優として出演したのが「初体験/リッジモント・ハイ」で共演して以来の大親友ジェニファー・ジェイソン・リーが監督と主演を務めた「アニバーサリーの夜に」(2001年)だった。ここでの彼女は、夫ケヴィンとともに主人公の親友夫妻という、そのままの役で登場。昔と変わらぬキュートな姿がファンの話題を呼んだものの、以降は女優活動を一切行っていない。
そんなわけで、アイドル時代が去ってからも活動を続けたブルック・シールズやソフィー・マルソーとは異なり、1980年代限定の伝説となったフィービー・ケイツ。もう少しいろんな作品に出ていたらとも思うけど、あらためて「プライベイトスクール」を観たら「これでいいんだ」という気持ちになった。なぜなら本作には、彼女が最も輝いていた瞬間が永遠に収められているのだから。
文=長谷川町蔵
長谷川町蔵●ライター&コラムニスト。「映画秘宝」「CDジャーナル」「EYESCREAM」などに連載中。著書に「インナー・シティ・ブルース」(スペースシャワーブックス)、「文化系のためのヒップホップ入門1~3」(アルテスパブリッシング/大和田俊之と共著)、「ヤング・アダルトU.S.A.」(DU BOOKS/山崎まどかと共著)など。人生で最も観た映画は「ブレックファスト・クラブ」。
放送情報【スカパー!】
プライベイトスクール
放送日時:2021年12月9日(木)21:00~、26日(日)19:15~
チャンネル:スターチャンネル2
※放送スケジュールは変更になる場合があります※放送スケジュールは変更になる場合があります
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