何度観てもおもしろい! ケヴィン・スぺイシーが助演男優賞を受賞した「ユージュアル・サスペクツ」の作品構造と演出法

第68回米アカデミー賞にて脚本賞や助演男優賞(ケヴィン・スぺイシー)を獲得した「ユージュアル・サスペクツ」
第68回米アカデミー賞にて脚本賞や助演男優賞(ケヴィン・スぺイシー)を獲得した「ユージュアル・サスペクツ」

でっちあげの事件による面通しでニューヨーク市警に召集された、元警官のキートン(ガブリエル・バーン)を筆頭とする5人の常連容疑者(ユージュアル・サスペクツ)たち。一堂に会した彼らは覚えのない嫌疑への報復として、密輸業者を護送中の汚職警官から強盗をはたらく。

だが、そんな5人のもとに、因果応報ともいえる依頼が舞い込んでくる。それは外国麻薬組織のコカイン取引を妨害することで、依頼人はカイザー・ソゼと呼ばれる、冷酷無比な麻薬王だった―。

脚本を手掛けたのは、のちに「ミッション:インポッシブル」シリーズを牽引することになるクリストファー・マッカリー
脚本を手掛けたのは、のちに「ミッション:インポッシブル」シリーズを牽引することになるクリストファー・マッカリー

(C) Paramount Pictures. All Rights Reserved.

■クリストファー・マッカリーの脚本によって複雑に階層化された作品構造

1995年に公開された犯罪サスペンス「ユージュアル・サスペクツ」は、ならず者集団と麻薬組織の凄惨な殺し合いで幕を開け、なぜこうした異様な事態が起こってしまったのかを、前者の生存人ヴァーバル(ケヴィン・スペイシー)の尋問から割り出していく。そして物語は事件の黒幕ともいうべき謎の男カイザー・ソゼの正体に迫り、犯罪者同士の殺し合いを誘発させたソゼは何者なのかという疑問に対し、映画は驚くべき解答を観る者に与えるのだ。

結果として本作は、サンダンス映画祭を起点に数々の映画祭で賞賛を浴び、「X-メン」(2000年)、「ワルキューレ」(2008年)の監督、ブライアン・シンガーのキャリアを本格的に始動させることとなる。また、「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(2015年)以降の同シリーズを牽引するクリストファー・マッカリー監督の脚本作として強烈なインパクトを放ち、複雑に階層化されたストーリー構造は、現在のマッカリー作品にみられる作劇のプロトタイプといえるだろう。

なによりこの「ユージュアル・サスペクツ」をおもしろいものにしているのは、「偽りの回想」で観る者を煙に巻く点にある。

同作は生存者ヴァーバルの証言によって事態が呼び起こされ、真実を明かしていく回想スタイルをとっている。観客は映像で展開される例証を無条件に事実とみなす傾向にあり、こうした性質を活かし、本作は観る者の予測を華麗に、かつ巧技にミスリードしていく。

かつては悪手とも言われた「偽りの回想」が効果的に使われている
かつては悪手とも言われた「偽りの回想」が効果的に使われている

(C) Paramount Pictures. All Rights Reserved.

■「偽りの回想」によって際立つカイザー・ソゼの存在感...

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放送情報【スカパー!】

ユージュアル・サスペクツ
放送日時:2022年9月26日(月)1:15~
チャンネル:ザ・シネマ

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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