戸惑いや絶望による呆然、そして怒り...と、感情の揺れ動きを表情や口調で見事に表現したウー・レイ。"中国版ジョーカー"の誕生と思わされるほどの怪演で第17回アジア・フィルム・アワード主演女優賞に輝いた母役のジアン・チンチンとわたり合う熱演は、俳優として大きな扉を開いたといって間違いないだろう。

そんなキャスト陣の熱演に加え、マルチ商法の集団に潜入して、自ら洗脳プロセスを体感したというシャオガン監督、「皮縄上的魂 (SOUL ON A STRING)」(2016年)で上海国際映画祭最優秀撮影賞の経験を持つ撮影監督のグオ・ダーミン、ウォン・カーウァイ監督作品など多くの海外作品にも名を連ねる日本の映画音楽家・梅林茂ら一流のスタッフも集結。山水画に喩えられる耽美的な独特の世界観を作り出している。

天上の大自然と人間による地獄という両極を描いてみせるという、シャオガン監督が新たな境地を切り開いている「西湖畔に生きる」。そんな意欲作でウー・レイの大自然にも劣らない存在感を堪能できることだろう。

文＝HOMINIS編集部