また、バブル経済時代が豪華絢爛に完全再現されており、当時のファッションをさらりと着こなすレオンからは大人の余裕が漂う。煙草を吸っているだけでも危険な色気を感じさせる。詐欺師という悪人なのに、チンというキャラクターすらもすべて演じているかのような飄々とした表情が妙に憎めない。だが、その裏にある真の顔は冷徹で恐ろしい。

圧巻の演技で惹きつけるレオン、そんな彼と堂々と渡り合えるのがラウだ。自らも家族をも危険にさらしてなお、強い意志と情熱を持って執拗にチンの捜査を続ける。鋭い眼光は重厚さを増し、少しずつ彼を追い詰めていく姿を熱演。互いにキャリアを重ねてきた2人は、20年の時を経てより進化した演技力で、息のあった掛け合いを見せる。対峙するシーンは瞬きができないほどヒリヒリとした緊迫感が漂っていた。

人命も価値を失うほどの大金が動くマネーゲームの代償を負うのは果たして誰なのか、凄腕詐欺師と執念の捜査官による駆け引きの行方はどうなるのか。レオンとラウ、香港映画界の2大スターが20年ぶりに見せた演技合戦に圧倒された。

文＝中川菜都美