2017年に引退宣言し、今年のカンヌ映画祭では"名誉パルムドール"に輝いたフランスの名優アラン・ドロン。ついに表舞台を去ってしまったが、カンヌに登場した際にも色男ぶりは健在だった。そんな彼が御年84歳を迎える11月8日の誕生日に合わせて、年代別のフィルモグラフィーを紐解きながら、その"色男ぶり"を振り返ってみたい。
22歳の時に映画祭が行われているカンヌを上半身裸で闊歩していたところ、声をかけられて俳優の世界に足を踏み入れた...という逸話を持つドロン。無名時代のジャン=ポール・ベルモンドと初共演を果たした『黙って抱いて』(1958年)や、ロミー・シュナイダーとの婚約のきっかけになった『恋ひとすじに』(1958年)などを経て、1960年に一躍ブレイクを果たす。それがルネ・クレマン監督による『太陽がいっぱい』だ。
イタリアで遊んで暮らす裕福な友人フィリップを連れて帰るように彼の父から頼まれた貧しいアメリカ人青年トムを演じたドロン。トムは貧しい人を見下すフィリップの態度に怒りと嫉妬心を抱き、彼を殺して成り変わろうとする...。若さゆえの野心に満ち、善悪の概念に縛られないアンチヒーロー像を、ドロンは完璧な美貌とカリスマ性で演じて見せ、人気を獲得することになった。
その抜群のルックスを活かし、20代は青春模様を描いた作品に数多く出演した。都会での生活の厳しさを描いたルキノ・ヴィスコンティ監督の『若者のすべて』(1960年)や、巨匠ミケランジェロ・アントニオーニ監督が現代文明を生きる空虚さ、虚脱感を表現した『太陽はひとりぼっち』(1962年)など、どこか影を感じさせる役どころで存在感を発揮。さらに貴族社会を描いた『山猫』(1963年)では麗しい姿で観るものを魅了した。
30代になると、アメリカ産の戦争映画『パリは燃えているか』(1966年)や、三船敏郎、チャールズ・ブロンソンと共演した異色の西部劇『レッド・サン』(1971年)など、国やジャンルにとらわれることなくチャレンジングな出演を続けていく。中でも異色作とされるのが、1972年の『ショック療法』だ。ある療養施設での奇怪な死の真相をめぐるこのサスペンスで、ドロンは若返り治療に取り憑かれた二重人格のマッドサイエンティストを怪演。若者たちの海辺での遊びに誘われ、砂浜を全裸で駆け回るオールヌードも話題となった。
また、ジャン=ポール・ベルモンドと再度共演した『ボルサリーノ』(1970年)などで製作にも関わるようになるドロンは、実在の刑事ロジェ・ボルニッシュの手記を映画化した『フリック・ストーリー』(1975年)では脱獄した凶悪犯を追うロジェ役で自身の魅力をセルフプロデュース。泥臭く粗暴だが人間味のあるキャラクターを丁寧に演じ、これまでの冷ややかさや甘さが抜けた新たな境地を見せつけた。
その後は製作だけにとどまらず、1980年の『ポーカー・フェイス/アラン・ドロン・ウィズ・ジャック・ドレー』では脚本、翌年の『危険なささやき』では監督にも挑戦。一時期は"美男子"の代名詞として日本でも熱狂的なファンを増やしたものの、40代後半からは徐々に出演本数を減らしていく。キャリア後期は出演した映画やテレビシリーズで元気な姿を見せてくれたが、ジャン・ポール=ベルモンドとまたも顔を合わせた『ハーフ・ア・チャンス』(1998年)の際に引退を表明。その後、一度は復帰を果たしたが、2017年に再び引退宣言が飛び出していた。今年のカンヌで目に涙を浮かべながら「スターになれたのは観客の皆さんのおかげ」とスピーチ。当代随一の人気を誇ったレジェンドが自身のキャリアに幕を引いた瞬間だった。
ザ・シネマでは、彼の誕生日に合わせて11月7日(木)と8日(金)に、「ザ・スターファイル:アラン・ドロン」と題したアラン・ドロン特集が放送される。特集内では、代表作『太陽がいっぱい』のほか『太陽はひとりぼっち』『ショック療法』『フリック・ストーリー』といった役者人生に欠かせない重要作をラインナップ。永遠に色褪せない"美男子"のイメージはもちろん、年齢を重ねて渋みが増したジェントルマンな姿まで、アラン・ドロンの魅力を存分に堪能したい。
文=HOMINIS編集部
放送情報
ザ・スターファイル:アラン・ドロン
太陽はひとりぼっち
放送日時:2019年11月7日(木)8:00~
ショック療法
放送日時:2019年11月7日(木)10:15~
太陽がいっぱい
放送日時:2019年11月8日(金)8:00~
フリック・ストーリー
放送日時:2019年11月8日(金)10:30~
チャンネル:ザ・シネマ
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