1987年の映画デビュー以来、数々のヒット作、話題作に出演し、長きにわたって第一線で活躍してきたブラッド・ピットだが、彼が俳優として初めてオスカーを手にしたのは2020年のことだった。
ピットに俳優としての初オスカーをもたらした映画は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)。レオナルド・ディカプリオと初共演を果たし、『イングロリアス・バスターズ』でタッグを組んだ鬼才クエンティン・タランティーノが、1969年のハリウッドへの愛情をうたいあげた作品となる。
この作品でピットが演じたのは、落ち目のテレビ俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)を支える付き人で、スタントマンのクリフ・ブース。業界でサバイブすることに神経をすり減らすリックとは対照的に、どこか飄々としていながらも、元戦争の英雄だったということもあり、腕っ節は非常に強い...という役柄だ。映画公開当時で55歳とは思えない、鍛え抜かれた見事なシックスパックも話題を集めた。
ブラッド・ピットは1963年12月18日、アメリカのオクラホマ州で生まれた。コロンビアのミズーリ大学でジャーナリズムを専攻し、広告のアートディレクターを目指していたというが、卒業間近に大学を中退し、325ドルを手にハリウッドに向かった。
そこから何年かの下積み生活を経て、リドリー・スコット監督の映画『テルマ&ルイーズ』(1991)のヒッチハイカーのJ.D.役に抜てきされる。2人の女性がひょんなことから人生が狂い始め、やがて警察に追われる羽目になるという、女性版『明日に向かって撃て!』(1969)と評されるこの映画。ピットの出演シーンはそれほど多くはないものの、ジーナ・デイヴィス演じる主人公テルマとのラブシーンなどが大きな反響を呼び、注目を集めた。
その後、『明日に向かって撃て!』に出演していたロバート・レッドフォードがメガホンをとった『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)に出演。"若き日のロバート・レッドフォードの再来"と評され、彼を一躍スターダムに押し上げた。
そしてその後も数々のヒット作に出演してきた彼は、名実ともにハリウッドのトップスターにのぼり詰め、『12モンキーズ』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』『マネーボール』ではアカデミー賞にもノミネートされた。近年は自身の制作会社「プランB」で数々の話題作を手がけるプロデューサーとしての手腕も発揮。映画『それでも夜は明ける』では、プロデューサーとしてアカデミー賞作品賞を獲得している。
だが、それだけの華やかなキャリアを持ちながらも、今まで俳優としてオスカーを獲得することはなかった。それだけに今年のアカデミー賞授賞式のスピーチで彼のオスカー受賞が決まった時は、会場に集まった多くの映画人たちから大きな歓声が沸き起こった。その時のスピーチで彼は「自分は過去を振り返る人間ではないが、今日は感激してしまったので、両親とドライブ・イン・シアターで『明日に向かって撃て!』を観ていた時のことを思いだしてしまった。それからハリウッドにやってきて。ジーナ(・デイヴィス)とリドリー(・スコット)にチャンスを与えられて。素晴らしい人たちに支えられてここまで来たんだ。本当に『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の物語そのものだよ」と感慨深く語っていた。
文=壬生智裕
放送情報
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
放送日時:2020年5月23日(土)12:00~
チャンネル:スターチャンネル2
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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