"日本人は水と安全とジャッキーはタダだと思ってる"とは、映画監督で脚本家の中野貴雄の名言だが、かように香港が生んだ稀代のアクションスター、ジャッキー・チェンは日本の隅々にまで浸透している。
そんなジャッキー・チェンが日本上陸を果たしたのは、1979年から80年にかけて立て続けに公開された『スネーキーモンキー 蛇拳』『ドランク・モンキー 酔拳』『クレージーモンキー/笑拳』の三部作。カンフーアクションにコミカルな要素を加えたこれらの作品はいずれも大ヒット、一躍ジャッキーブームが巻き起こった。
"拳"シリーズは、公開にあたって日本独自のさまざまな工夫が凝らされていた。その最たるものが、『ルパン三世』の原作者、モンキー・パンチによるポスターとオープニングアニメーション(『笑拳』)、そしてオリジナルの日本語主題歌だ。
"モンキー"つながりでイラストを依頼!?
製作された順番とは違い、日本で最初に公開されたジャッキー映画は『ドランク・モンキー 酔拳』である(1979年7月。菅原文太主演『トラック野郎・熱風5000キロ』の併映)。当時のジャッキーはまったく無名で、配給した日本の映画会社でさえ、ジャッキーの写真を1枚も持っていなかった。
それならポスターはイラストで行こうと考えた宣伝部。"ドランク・モンキー"というタイトルに引っかけて、同じモンキーだし、という理由のみでモンキー・パンチに依頼された。あ、安直! だが、試写を観て作品を気に入ったモンキー・パンチは快諾した。
酒の盃を持ってポーズを決めるジャッキーのスマートなイラストポスターは大人気となり、宣伝は大成功を収めた。筆者の年長の従兄弟の部屋にも、このポスターが飾られていたのをよく覚えている。"酔えば酔うほど強くなる"という名コピーは東映の"惹句(じゃっく)師"関根忠郎によるものだ。
驚きのオープニングアニメの内容
"拳"シリーズで三番目に公開された『クレージーモンキー/笑拳』では、世にも珍しい日本版オリジナルのオープニングアニメーションが冒頭に付け足されている。
キャラクターデザインはポスターに続いてモンキー・パンチが担当。中身は本編のストーリーと一切関係なく、ルパンそっくりの男と次元大介そっくりの男(ちゃんと帽子も被っている)が峰不二子そっくりのセクシーな美女にちょっかいを出すというもの。
なぜか裸のシーンが多く、いきなりバスト丸出しで寝ている美女に夜這いをかけようとした男二人が鉢合わせるところから始まり、全裸の女性が寝そべっている看板に『クレージーモンキー/笑拳』とタイトルが入る。女性の股に映倫マーク! なんというか、いろいろな意味でおおらかな時代だった。BGMはDr.スープというディスコバンドが担当している。
長らく観ることができなかった日本版オープニングアニメーションだが、2012年にリリースされたブルーレイに初めて収録された。テレビで放映されることも非常に珍しいので、ぜひその目で確かめてほしい。
参考:『映画秘宝』1999年7月号
Writer:大山くまお
※この記事はヨムミル!ONLINEの転載になります。
放送情報
特集:ジャッキー・チェン“拳”シリーズ 4作品
放送日時:2018年1月3日(水)10:00~
チャンネル:ムービープラスHD
番組説明:
『スネーキーモンキー 蛇拳』
『ドランク・モンキー 酔拳』
『カンニング・モンキー/天中拳[日本公開版]』
『クレージーモンキー/笑拳[日本公開版]』
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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