海外ドラマ「ブラックリスト」は全米での放送開始以来、高視聴率を獲得し続けているジェームズ・スペイダー主演のアクション・サスペンスドラマだ。複雑に絡み合う人間関係に急展開が起こる大人気シリーズのシーズン8が独占日本初放送される。
エリザベス・"リズ"・キーンは母親であるカタリーナ・ロストヴァと組んで、レイモンド・"レッド"・レディントンが隠す謎を解き明かす決心を固めていた。レディントンとエリザベス、カタリーナさらにはチームメンバーとの関係はどうなっていくのか...
海外ドラマ専門チャンネル「スーパー!ドラマTV #海外ドラマ☆エンタメ」にて5月25日(火)からの放送に先駆け、レイモンド・"レッド"・レディントン役のジェームズ・スペイダーにインタビューを敢行。作品についてのこだわりなどを語ってもらった。
──「ブラックリスト」はアクションたっぷりの作品ですが、パンデミックのさなかに撮影するのは大変だったのではないでしょうか。
なかなか大変でしたよ。スケールが大きなドラマですからね。携わっているスタッフも多くて、ポスト・プロダクション(撮影後の編集作業)も入れれば400人近いと思います。セットにいるのは、300人超くらい。なので、(コロナ対策が)とても難しいんです。
それから撮影許可の申請も厳しくて、許可が下りる場所や、何人まで入れるかなどの制限があるんです。今回のシーズンはそういう環境だったにも関わらず、製作をやり遂げるために大きな大きな努力をしてきました。スタッフの皆さんが見事な仕事をされたから、災難も想定の範囲内に留まった、ということは言わせていただきたいですね。
──これまで視聴者は、レディントンの様々な面に驚かされてきました。シーズン8で、ご自身が驚いたことはありましたか?
今回のシーズンもサプライズが山盛りです。私にとっては、脚本家とずっと前に話していた内容が実現化しているので、そういう意味でも驚きはありますね。ここ数シーズンでの出来事は、私たちが前からずっと話していたことなんです。なので、私たちよりも皆さんの方が驚かれることが多くあると思います。
私はレイモンド・レディントンが置かれている様々な状況に驚かされています。ある状況下での自分の反応に、自分でも驚くことがあります。そのことを楽しんでいますよ。状況によって自分がどう反応するか、それにはっとさせられるのも、役者というものの面白いところだと思いますから。感情的な反応についてもそうですし、初めての場所で自分はこういう風に振る舞うんだという発見をして、その設定の中でシーンを演じるということもそうです。こういったことにいつも驚かされています。時々、シーズン中に予想もしなかったことが起きたり、問題を解決する必要があったり、最初に考えていたやり方とは違う方法を新しく考えることもあります。
そういう驚きは、どうやってとか、何がとかではなく、ドラマがどんなところにたどり着くのかということで、そこは今でも驚かせてもらっています。プロットとは前に進んでいくものですからね。そういった小さな波だったり、細かなことは、シーズン8の今も楽しく驚かされていますよ。
──レディントン役をずっと演じてきて、ご自分の演技の成長をどう見ていますか?「ブラックリスト」で楽しみにしている新しい要素や挑戦はなんですか?
「ブラックリスト」は私が携わったテレビ番組の中で、長く続いたものとしては2作目なんですけど、100エピソード以上演じるわけですよね。1作目は「ザ・プラクティス」のアラン・ショアというキャラクターで、放送翌年に(スピンオフ作の)「ボストン・リーガル」として数年続いて。今はこの「ブラックリスト」でシーズン8までやってきたわけです。
(アラン役とレディントン役の)両方のキャラクターで魅力的だったことは、キャラクターがストーリーの中でどう成長していくかだけではなく、周囲も含めて時間の経過によってどう成長したかを見られるということです。レイモンド・レディントンの場合は、もう8年も演じてきて、私も8歳年を重ねたわけですし(笑)。レイモンド・レディントンは私と共に8歳重ねたわけですよ。
時間とともに変化し、成長するものがあるというのは、テレビドラマの素敵なところですね。私はキャリアの中で幸運にも、たくさんの映画や演劇、そしてテレビドラマでお仕事をさせていただきました。全部、まったく違うんですよね。テレビドラマでの仕事のユニークなところは、長いことやっているとキャラクターが自分と共に年をとっていくというところです。キャラクターがどう年を取るのか、キャラクターの視点やモノの考え方がどう変わっていくかも分かるということです。
特にレディントンの場合は、健康問題もありますが、彼の人生の本質的なところも見ています。これまでの彼の人生は若かった。しかしこれから年を取っていったとき、維持していくには大変な人生です。70代になってもやりたいことじゃないし、70代になっても生きたいような人生じゃない。
それは彼の人間関係が成長したということでもあります。このテレビドラマでは、彼の人間関係がどういうものか、その質や、どう成長したかを見せることがとても重要です。幸いにも、そういった人間関係の変化と発展、そこから別の道に進んでいく様子を見る時間はたっぷりある。今年が良い例ですよ。このシーズン8では、レイモンド・レディントンとエリザベス・キーンとの間に深い深い溝が生じます。私はそういうところに魅力を感じますし、掘り下げていくのが楽しいんです。
──「ブラックリスト」は、もう8年も続いていますね。その間にストリーミングサービスが台頭しています。こうした影響はドラマにもありますか?HBO MaxやNetflixと競争しなくてはならないことを考えると、どういった努力が求められるんでしょうか?(※質問者の国ではNetflixで「ブラックリスト」は配信されていないとのことでの質問)
Netflixと競争なんてしませんよ。なにせ「ブラックリスト」はNetflixで配信されていますから(笑)。どのシーズンだったか、Netflixでトップ10に入っていたこともあるんですよ。だからストリーミングサービスは私たちにとって、とても大切なものでもあるんです。
番組を録画しておいて後で観たり、NBCの配信サイトで観られるといった新しいテクノロジーがもたらした変化もあります。「ブラックリスト」は、そういったことが発展し、このビジネスのスタンダードや話題の中心になっていく一方でずっと放送されてきた番組ですね。
でも、あなたがおっしゃったことは面白いですね。私たちは1シーズンあたり22話あって、その中でストーリーを伝えています。私たちとしては、それくらいのエピソード数は欲しい。私はこれまでの「ブラックリスト」のどのシーズンでも、ネットワークが購入したエピソード数のノルマ分を穴埋めしているように思ったことはありません。
シリーズがあまりに続きすぎるとそうなってしまうんでしょう。でも、「ブラックリスト」ではそこが問題になったことはありません。シーズン数もエピソード数も、これでもストーリー上はギリギリの量ですよ。先日、製作総指揮のジョン・ボーケンキャンプとも話していたんですけど、とある1エピソードだけ、20分長いことがあったんです。彼はカットできるところはすべてカットしたんですけど、それでも20分長くなってしまったと。
ネットワークの番組で22エピソードもやらせていただけるのは幸運なことです。こんなにたくさんの時間を持たせていただいていることに、本当に、本当に感謝しているんです。それに、ストリーミングサービスやテレビにたくさんの作品があることも喜ばしく思っています。そのおかげでコンテンツがどんどん良くなるでしょうから。世の中には様々なものがありますが、競争によって質が良くなっていくのなら、それは良いことだと思いますよ。私たちも、そのために努力をしています。
NBCの皆さんもソニーの皆さんも親切ですし、私たちはこの環境がとても気に入っています。既にシーズン9も決まっています。私たち製作側も、とんでもなくワクワクしているところです。単調な日々の仕事という感じはなくて、未だに私たちも驚かされることがあります。毎年新たな問題が出てきますし、エピソードごとに解決しなくちゃならないことが出てきています。
──シーズン8では劇中で(新型コロナウイルスの)パンデミックに関する描写をされていないようですが、何か理由はありますか?
「ブラックリスト」の世界は私たちが暮らす世界とは別のパラレルワールドに存在しているからでしょう。私たちは現実世界の出来事をドラマに取り入れようとしたことはありません。
昨年(2020年)シーズン7の第19話を自然な流れにできた理由もそうです。あのエピソードでは、1/3まで撮影した時点で、パンデミックのため中断せざるを得ませんでした。どうすればエピソードを仕上げられるか、途中停止せずにシーズンを終えられるかを模索しました。そこで、既に「ブラックリスト」のコミックやグラフィックノベルがあったので、第19話はその延長線上としてアニメを使って仕上げたんです。
これは非常に「ブラックリスト」らしい話だと思います。私たちのドラマは、現実世界を描こうとしたことはなくて、常にパラレルワールドを描いているんです。時事ネタを取り扱うエピソードはやりません。独自の世界があって、そこにキャラクターたちが生きているんです。
そうすることで、ドラマが皆さんにとっての現実逃避にもなってくれると感じています。「ブラックリスト」の人気の理由は、物語が現実から離れているからではないでしょうか。私たちの生活についてではなく、キャラクターたちの生活を描いている。私たちが暮らす現実世界ではなく、キャラクターたちの世界に忠実でありたいと考えているんです。それで、(新型コロナウイルスが物語に登場しないという)決断に至ったわけです。
──8シーズンもやってこられて、今までどうやって役に関する秘密を守ってきたんでしょうか?
ベラベラ話しすぎないことです。簡単なことなのに、非常に難しいんですけどね。とにかく慎重にならないと。脚本家の皆さんなんかは、質問を尋ねられた時、何かを答えているような印象を与えつつも喋りすぎないように用心されていて、驚異的に上手くやられていますよね。
今でも、脚本を読んでいると、会話ひとつでもストーリーがハッキリわかってしまったり、物語をどうやって伝えるのかがピンと来るようなことがあります。(質問の)答え方についてですか?質問に答えるときは、こちらからも別の質問を持ち出す、ということをずっとやっています。このバランスを保つことができれば、ミステリーや好奇心、サプライズを重要かつ活き活きとしたものにできると思います。
──レディントンや「ブラックリスト」の結末について、既に脚本家とお話されているのでしょうか?
残念ながらその質問にはお答えできません。脚本家の皆さんとは、お会いしたその日から、このシリーズがどうなっていくのかの全てを話してきています。8年前のプロットの頃から、脚本家の皆さんと私は連携を取りながらご一緒してきていますよ。
私は自分のキャラクターがどうなっていくかは常に知っていますし、常にそのことを話し合っています。方針が変わるというときには、必ず脚本家のうちの1人とは話をするようにしています。週のうち、ほぼ毎日話していますね。
──レディントンはこの8年でどのように変化したのでしょうか?この8年で、テレビにおける男性キャラクターのあり方が変わったとしたら、どのような変化があったのでしょうか?
レイモンド・レディントンについてお話することはできますが、あまりテレビを観ないもので、ご質問の後半部分はお答えできません。他のテレビ番組について話すことはできないんです。このドラマの製作で忙しくさせていただいていて、観る時間もないものですから。
お休みが取れてテレビや映画が観られるときには、12歳の息子と一緒に観られるものを選ぶようにしています。彼が興味を持つのはアニメ映画であることが多いですね。それから、ドキュメンタリーもたくさん観ています。
レイモンド・レディントンについてですが、彼は大きく変わりましたね。まず年を取りました。逃亡者としての人生にも変化があって、今では他人との関係性に責任と恩義を感じていて、そのことが彼の日常にも現れています。ドラマが始まった頃、彼は常に逃亡中の身で、自分の人生や友人、デンベ・ズマのことばかりを気にしていましたよね。
そこが大きな変化です。今の彼は、タスクフォースの特定の人たち以外の対人関係にも善処しています。エリザベス・キーンとの関係もそうですね。過去8年間で、彼の人生に大きな影響を与えた人です。彼の仕事は山あり谷ありでした。数シーズン前には、シーズンの半分を刑務所で過ごしてもいますよね。色々なことがありました。
放送情報
ブラックリスト シーズン8
放送日時:2021年5月25日(火)22:00~
【二カ国語版】毎週(火)22:00~ほか、【字幕版】毎週(水)0:00~ほか
チャンネル:スーパー!ドラマTV #海外ドラマ☆エンタメ
※2021年5月18日(火)20:00~BSスカパー!で第1話先行放送あり
※スーパー!ドラマTV #海外ドラマ☆エンタメおよびBSスカパー!で『15分でわかる「ブラックリスト」シーズン1~7』放送あり
※放送スケジュールは変更となる場合があります
詳しくはこちら