まったくの別人！「国民の息子」と愛され続けるイ・スンギが見せた新たなチャレンジ

J.Y. ParkとPSYがタッグを組んだオーディション番組「LOUD」への合流が話題を呼んでいるイ・スンギ。自身のMCや歌手としてのキャリアも武器に、"スーパー・エージェント"としての役割を見事に果たしている。

もとよりバラエティタレントとしての実力は十分。自身の冠番組「イ・スンギのチプサブイルチェ～師匠に弟子入り」が高視聴率をキープし、"育児"をテーマにしたヒーリングバラエティ「リトル・フォレスト」では包容力ある一面も垣間見せるなど、"国民の息子"と慕われたそのキャラクターは健在だ。

その一方で、俳優業では2017年の除隊以降、パブリックイメージを覆すチャレンジングな役柄が続いている。その1つが、韓国では今年春に放送されて視聴者に大きな衝撃を与えた本格サイコスリラー「マウス(原題)」だ。日本では9月5日(日)に第1話先行放送、9月13日(月)からレギュラー放送がMnetで始まる。

スンギといえば、視聴率47％超を叩き出した初主演ドラマ「華麗なる遺産」(2009年)などで憎めないキャラクターを演じ、抜群の好感度を誇ってきた。そのパブリックイメージから脱却し始めたのは、兵役を経た後からではないだろうか。除隊後初の主演作「花遊記＜ファユギ＞」(2017年)では自由気ままな孫悟空を嬉々として演じ切り、「バガボンド」(2019年)では軍隊で学んだ武術・クラヴマガを活かしてアクションシーンのほとんどを吹き替えなしで撮影。アクションスターとしても才能を開花させた。

そんな中で制作された「マウス(原題)」は、見た目や性格が対照的な巡査と刑事の2人組が、サイコパスの中でも最も凶悪な存在"プレデター"を追跡していくスリラー。スンギは優しい性格で街の住民たちに愛される巡査チョン・バルムを演じる。

ことの発端は、25年前に韓国全土を震撼させた連続猟奇殺人事件。事件の余波が広がり、国会ではサイコパスによる犯罪を抑止するための遺伝子検査の義務化が検討されることに。そんな中、遺伝子検査によって「サイコパス傾向がある」とされた子どもが誕生する――。

そうした背景を描いたところで、第2話からストーリーは現代へ。スンギ演じる礼儀正しい新人巡査バルムと、イ・ヒジュン演じる暴力的な刑事コ・ムチが、プレデターを追跡する緊迫感ある展開が繰り広げられていく。

残虐的な描写も多く、韓国では放送時"R指定"されたほどの本作。その中で、非の打ち所がないほど礼儀正しく社交的で、ルックスも申し分ないバルムはまさに一服の清涼剤。序盤はとにかく善良で正義感あふれ、信頼できるキャラクターとして描かれる。

そんなバルムがムチとともにサイコパスを追うようになり、自身の人生を大きく転換させることに...。いったい"プレデター"は誰なのか？その正体を予測する謎解き要素と、極限状態へと向かうバルムの緊張感に一気に引き込まれていく。

スンギが「マウス(原題)」で見せる苦悩や恐怖の表情は、"国民の息子"と慕われ愛されてきた人懐こいキャラクターとはまったくの別人。同作の衝撃的すぎるラストは韓国での放送時も大きな反響を呼んだが、それもスンギの熱演があってこそ。作品ごとに飛躍し続けるスンギの尽きることのない伸びしろを目の当たりにできるはずだ。

文＝酒寄美智子

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