コン・ヒョジンとの「ケミ」が抜群！めんどくさい大人の恋をキム・レウォンが絶妙に体現

韓国で間もなく公開される映画『デシベル(原題)』が注目を集めているキム・レウォン。イ・ジョンソクの除隊後初のスクリーン復帰作であり、ASTROのチャ・ウヌら最旬スターらとの共演ということも相まって、ケタ違いの期待値が集まっているテロアクション大作だ。

緊迫した男たちとのドラマではハードな表情を見せる一方で、恋愛ドラマを演じれば甘いマスクと包み込むような眼差しで"韓流界のジェントルマン"と称されてきたレウォン。共演するヒロインの魅力を際立たせるロマンス演技は出色で、中でも"ラブコメの女王"ことコン・ヒョジンと共演した映画『最も普通の恋愛』(2019年)で見せた、彼らの抜群のケミストリーは反響を呼んだ。

1996年のドラマ「私」で芸能界デビューして以来、コンスタントに恋愛作品に出演し、ファンを魅了してきたレウォン。産婦人科を営む一家のドタバタを描くホームコメディ「順風産婦人科」(1999年)でソン・ヘギョ演じる末娘と恋愛する大学生役を演じて注目を集め、「ラブストーリー・イン・ハーバード」(2004年)では法曹一家に育ったエリート学生・ヒョヌを好演。キム・テヒ扮する医学生との爽やかな恋愛模様でファンをくぎ付けにした。

30代後半に入ってもジェントルマンぶりは健在。近年では、パク・シネとの年の差恋愛で女性ファンをキュンキュンさせた「ドクターズ～恋する気持ち～」(2016年)や、甘いセリフでシン・セギョン演じるヒロインを一途に口説きまくる「黒騎士～永遠の約束～」(2017年)も印象深い。

そうそうたるトップ女優たちを相手にロマンスを繰り広げてきたレウォンだが、40歳目前で出演した『最も普通の恋愛』は、まさに大人の魅力に溢れた良作だ。

「雪だるま～Snow Love～」以来、16年ぶりとなるコン・ヒョジンとの共演で、どこにでもいそうなごく普通の独身男・ジェフン(レウォン)と、職場に新しく入ってきたばかりの同僚ソニョン(コン・ヒョジン)が少しずつ関係を深めていくさまをコミカルに描いている。

広告会社でチーム長を務めるジェフンは、ひと月前に結婚が破談になったばかり。仕事はバリバリこなす一方で恋愛においてはピュアで、元カノへの未練を断ち切れず未練タラタラ。そんなジェフンの前に現れたのが、一風変わった雰囲気の女性ソニョン。キツめのアイラインが象徴しているように、恋愛にはちょっぴり冷めた現実主義者で、こちらも恋人と別れたばかりだ。

ともにフリーになって間もないジェフンとソニョンは、お酒の力を借りて互いの恋愛面での傷を知り、親密になっていく。ソニョンが「若い子みたいに別れを引きずって。初恋みたい」とチクリと刺せば、ジェフンも「本気になったことないだろ？」と応戦する。

恋愛経験を重ねてきた大人の男女ならではの、駆け引きめいた会話のテンポもが心地よく、したたかに酔った2人は自身の恋愛観も吐露していく。「愛に幻想がないだけ...男なんてみんな同じ」(ソニョン)「ロクな男に出会ってないんだな」(ジェフン)――お酒が入った時にだけ見せるジェフンの少し甘えたようなぶっきらぼうな口調が、かえって恋のはじまりを予感させる。

そうかと思えば、ジェフンの心の奥底にあるのは、「愛する人と出会って恋愛して結婚し、ともに年老いていく。それこそが幸せだ」という"本物の恋"への強い渇望だ。職場や同僚の前では平静を装っていても、内心はお酒を飲まなきゃやってられない...そんな失恋の痛みを抱えた中年男性の孤独を、レウォンはリアルに表現する。そして、ジェフンがそんな情けない姿をさらけ出せる相手はソニョンだけ。いくつもの恋を失って傷ついてきた2人が、臆病ながらも互いに少しずつ心を開いていく過程は、ビターで深みのある味わいだ。

恋人と別れて間もない大人の男女のリアルな恋愛模様が魅力の本作。作品ごとに忘れがたい"ケミ"を生み出し、相手役の魅力を引き立たせてきたレウォン。そんな彼が年齢を重ねたからこそナチュラルに体現する、大人なロマンスに酔いしれてみてはいかがだろうか。

文＝酒寄美智子

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