2020年のヒットドラマ「Sweet Home -俺と世界の絶望-」以降、飛躍的に知名度をアップさせているイ・ドヒョン。その後は、同作で兄妹役を演じたコ・ミンシと切ないロマンスを繰り広げた「五月の青春(原題)」や、名優シン・ハギュン扮する主人公の青年期を演じた「怪物(原題)」など、話題作への出演が続いている。そんな中、実年齢で16歳差の名女優イム・スジョンと美しいロマンスを演じ注目を集めたのが、「メランコリア(原題)」(2021年)だ。
5月20日(金)よりMnetで日本初放送される「メランコリア(原題)」は、"数学"がモチーフ。「女神降臨」や「偶然見つけたハル」のキム・サンヒョプ監督による切なくも美しい純愛ラブロマンスで、天才的な頭脳を持ちながらひっそりと学生生活を送る高校生ペク・スンユ(イ・ドヒョン)と、数学を愛し生徒たちに熱心にその面白さを説く教師チ・ユンス(イム・スジョン)が出会い、心を通わせていく姿を描く。
全体的に清らかな雰囲気に満ちている前半パート。校内の木々の明るい緑と、高校生たちの制服シャツの白がまぶしい。ドヒョン演じるスンユも物静かで内向的な青年で、幼い頃は"数学の天才"ともてはやされたが、過去のトラウマから今はその才能を隠し、成績も学年最下位だ。
だが数学への想いを捨てきれることはできず、目に映る景色にも無意識に数学的な美しさを探してしまう。自分の気持ちにフタをすればするほど、心の奥底では求めずにいられない...。初回では、まるで数学に対して許されない恋心を抱いているかのようなスンユの姿が描かれる。
そんな彼の静かな生活が、数学をこよなく愛す教師ユンスとの出会いによって一変する。ユンスのちょっとした挑発に乗り、つい本気で数学の証明問題を解いてしまったスンユ。それをきっかけに、彼の心の奥底にあった想いも呼び覚まされていく。第1話のラスト、笑みを浮かべたユンスに「見つけた」と顔を覗き込まれ、スンユが驚きで固まってしまうという場面は、2人の関係性が花開く、なんともドラマチックな出発点だ。
そして、教室の黒板で朝まで2人きり、スンユとユンスが夢中になって問題を解く場面。この時を境に彼らの距離はぐっと縮まり、無表情だったスンユにも笑顔が浮かぶようになる。
何と言っても、スンユの感情の変化を豊かに表現するドヒョンの演技から目が離せない。集中して問題を解く彼のひたむきな瞳は吸い込まれそうなほどに美しく、愛する数学を取り戻したスンユの喜びが、ユンスへの想いに変わっていく過程も自然で引き込まれる。
何も言わず彼女に座席を譲ったり、雨のなか傘を差しだしたり...ぶっきらぼうながら優しいスンユの人柄も、2人の関わりの中で見えてくる。
そして、スンユが心惹かれていく女性教師・ユンスをチャーミングに演じるのが、人気女優のイム・スジョン。ホラー映画『箪笥』(2003年)や、日本でもリメイクされたヒットドラマ「ごめん、愛してる」(2004年)などで名だたる賞を受賞した名女優だ。
ユンスは知的で落ち着きがあって、無邪気。スンユが何気なく撮影した風景写真から数学の法則や数学的な模様を読み取り、頑なだったスンユの心をほぐして深い数学の世界へと連れ出していく。
婚約者のいるユンスは、あくまで教師として数学オリンピックに挑むスンユを見守っていたが、やがて彼が抱えている過去のトラウマを知り、自身の境遇と重ね合わせるように。数学への情熱という互いの共通点が、2人を強く結びつけ、次第に親密な空気を醸し出していく。校内ではそんな彼らの仲を不適切な関係だと怪しむ声が聞こえ始める...。
今年4月で27歳を迎えたドヒョン。繊細でナイーブな高校生・スンユ役をごくナチュラルに演じているが、後半パートとなる第7話からは"4年後"の関係性が描かれる。様々な思惑によって翻弄される2人の恋物語が、どのような顛末を迎えるのか?思いもよらない劇的でミステリアスな展開にぐいぐいと引き込まれてしまうことだろう。
女性教師と男子生徒のロマンスという、スキャンダラスな響きを映画のように美しく詩的に成立させているのは、主演カップルを演じたイム・スジョン&イ・ドヒョンが醸し出す清廉さ。惹かれ合う2人がお互いに向ける愛情は、数学への想いにも似てひたむきで、どこまでも純粋だ。
今もっとも注目すべき若手俳優の筆頭としてその名が挙がるドヒョンだが、「メランコリア(原題)」で、その瑞々しい演技を改めて堪能してみてほしい。
文=酒寄美智子
放送情報
メランコリア(原題)
放送日時:2022年5月20日(金)21:00~
チャンネル:Mnet
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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