キム・ウビンが主演を務める新作「配達人~終末の救世主~」で初の悪役に挑むことが話題を呼んでいるソン・スンホン。端正なビジュアルを武器に多数のロマンス作品に出演してきた彼だが、近年はそれまでのイメージとは一線を画す多彩な役柄が多い印象だ。
正統派イケメン路線から大きく振り切った「偉大なショー~恋も公約も守ります!」(2019年)や、手に汗握るアクションも満載のスリラーシリーズ「ボイス4~112の奇跡~」(2021年)など、まさに新境地とも呼べる役柄に次々に挑んでいるが、正統派時代劇に初挑戦となった作品が、国民的な大女優イ・ヨンエとタッグを組んだ「師任堂(サイムダン)、色の日記」(2017年)だ。
「師任堂(サイムダン)、色の日記」は、韓国で"良妻賢母の象徴"であり、高額紙幣5万ウォンの肖像画でも知られる申 師任堂(シン・サイムダン)の真の姿と隠された愛が明かされる物語。
現代パートと約500年前の朝鮮時代パートが交錯する本作は、名画「金剛山図」を介して結びつく、現代に生きる美術講師・ジユンと朝鮮時代の天才女流画家・サイムダンの葛藤を紡ぎ出していく展開で、大ヒット時代劇「宮廷女官チャングムの誓い」以来、実に13年ぶりのドラマ出演となったイ・ヨンエが、この2人の女性を1人2役で演じている。
韓国美術史を専攻し、大学で非常勤講師を務めるジユン(イ・ヨンエ)は世紀の発見と言われる絵画「金剛山図」の真贋を巡って指導教授と対立してしまう。そんな時、偶然イタリアで古い日記を入手したジユンは、若き日の師任堂(サイムダン)の切ない恋模様と、「金剛山図」に関する秘密を知ることになる。
一方、16世紀の朝鮮時代。絵画に並々ならぬ情熱を燃やす少女・サイムダンは、「金剛山図」をきっかけに芸術を愛する王族の青年イ・ギョムと出会う。たちまち恋に落ちた2人は結婚を誓い合うが、ある事件に巻き込まれたことで無残にも引き裂かれてしまう。その後、サイムダンが別の男性に嫁いだことを知ったギョムは茫然自失の果てに各地を放浪。落ちぶれた生活を送るが、その後も彼女を見守り、愛し続ける...。
報われないと知りつつもサイムダンだけを一途に愛するギョム。青年時代はデビュー直後のヤン・セジョンが初々しさいっぱいに演じており、スンホンは成年後のギョムを多彩な表情で表現力豊かに演じている。
実ることはない想いを抱えてサイムダンを見つめる眼差しは、優しくもとても切ない。20年ぶりに再会した際は「あなたは今もこの胸にいる」とすがり、紙作りを始めたと聞けば夜中にこっそり手伝い、彼女の息子が学堂に通えるように奔走する...。なりふり構わぬ純情一直線のギョムを、スンホンはその行動力と情熱も携えた芝居で熱演し物語に深みを与えている。
2人が甘い雰囲気で夜食を楽しむシーンは、笑顔も交えながらの仲睦まじい"デート"の様子が何とも微笑ましい。何気ない日々の積み重ねの中で、その絶妙な関係性が透けて見える高い演技力に魅了されることだろう。
最終話直前の切ない別れのシーンでは、ギョムがサイムダンに「あなたに会えて本当に幸せだった...」と涙を流す。夜の船着き場で麗しい2人が向かい合う姿は、その画だけでも最高にロマンティック。ヨンエとスンホンの凛々しさと儚さの混ざった芝居が、劇中で最高潮のケミストリーを生み出している。
韓流史上最高の"純愛史劇"として、その豪華キャスティングにも注目が集まった本作。生涯にわたり一途な愛を貫く役柄を切ない瞳と精悍な佇まいで演じ、初挑戦の時代劇でも独自の存在感を発揮したスンホン。現代ロマンス劇のスマートさとはまたひと味違った、芸術への情熱溢れる姿もまた新鮮だ。
文=川倉由起子
放送情報
師任堂(サイムダン)、色の日記< 完全版>
放送日時:2022年6月13日(月)8:30~
※毎週(月)~(金)8:30~
チャンネル:スカチャン1(KNTV801)、KNTV
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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