「陳情令」(2019年)の一大ムーブメントを追い風に、アジア中に人気が広がっている中国時代劇。「陳情令」でシャオ・ジャン&ワン・イーボーが演じた魏無羨&藍忘機はまるで太陽と月のような正反対の魅力を放ち、多くの中国時代劇ファンを魅了した。そんな「陳情令」に負けず劣らず大反響を巻き起こした麗しきブロマンス作品と言えば、チャン・ジャーハン&ゴン・ジュン主演の「山河令」(2020年)だ。
「山河令」は、晋王に仕える暗殺組織"天窗"の首領を担っていた周子舒(ジョウ・ズーシュー/演:チャン・ジャーハン)が、謎の貴公子・温客行(ウェン・コーシン/演:ゴン・ジュン)と出会い、"一夜にして無敵になれる"と言われる武庫の鍵「琉璃甲」を巡る争いに巻き込まれていくブロマンス時代劇。
野心のために天窗を利用する晋王と縁を切ろうと決意した周子舒は、自ら望んだ極刑によって組織を脱退し、代わりに"余命3年"の自由を手に入れる。粗野な流れ者に変装し、武芸の腕も隠して放浪を続けていたが、ある時、謎めいた温客行と遭遇。周子舒が不意に見せた俊敏な身のこなしに、「この男、ただ者ではない」と見抜いた温客行は、面白がって追いかけ回すようになる。
偶然の再会が重なるほど、温客行の押せ押せムードは高まるばかり。悪漢に襲われて、山荘で眠れぬ一夜を過ごした翌朝には「貴殿とともに一晩を過ごしたが"温殿"としか呼ばぬな。他人行儀だぞ」と意味深な発言をし、周子舒の顔を見つめて「貴殿の素顔はさぞ男前だろうな。その仮面の下には期待以上のものが隠されているはず」と囁くなど、距離をグイグイと詰めようとする。
周子舒のほうも、口では「お前が誰でどこに行くのか興味はない」と無関心を装うものの、自分の変装や正体を見破った温客行に少しずつ心を許し、信頼し始める。互いの能力に一目置き、徐々に深まっていく2人の絆には思わず惹きつけられるし、ブロマンス沼にハマっていく理由がよく分かる。
周子舒を演じたチャン・ジャーハンは、日本でも人気を集めた「ハンシュク~皇帝の女傳」(2015年)や「琅琊榜 ~麒麟の才子、風雲起こす~」(2015年)で演技力を高く評価される人気俳優。そして温客行役のゴン・ジュンは、「ロマンスの方程式」(2019年)を皮切りに立て続けに主役を務め、「山河令」で満を持して大ブレイクを果たした注目株だ。
2021年2月に中国で配信されると、2人の美しいルックスとしなやかなアクションに魅了される視聴者が急増。放送終了後も、2021年上半期視聴者評価ランキング(中華時代劇部門)1位を獲得したほか、中国最大の作品評価サイト・豆瓣(Douban)では、あの「陳情令」を超える高評価を獲得するなど、その勢いは収まらない。世界190以上の国と地域に配信されると、彼らの人気は瞬く間に急拡大していった。
主演2人の結びつきが人気の大きな要因ではあるが、「山河令」の魅力はそれだけではない。登場人物の武侠アクションは舞を踊っているかのように華麗で、物語を盛り立てる山河や咲き誇る杏の林など、まるで水墨画のように美しい情景にも目を奪われる。司馬遷の「史記」といった著名な歴史書や漢詩を用いたセリフも耳に心地よく、中国史劇ならではの奥行きを感じさせる。
「陳情令」の主題歌「忘羨」と同様、本編のエンディングにはチャン・ジャーハン&ゴン・ジュンが歌う「天涯客」が流れ、物語の余韻に浸れる点も味わい深い。早くから"ポスト「陳情令」"として前評判の高かった本作だが、より武侠の要素が引き立つストーリーは唯一無二の世界観と言えるだろう。長い物語の行く末にはどんな景色が広がっているのか――ぜひ見届けてほしい。
文=酒寄美智子
放送情報
山河令 第1話先行放送
放送日時:2022年7月3日(日)21:00~
※レギュラー放送は7月12日(火)より毎週(月)~(金)20:00~
※7月3日(日)21:00の回、12日(火)の20:00の回は無料放送
チャンネル:女性チャンネル♪LaLa TV
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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