
TVアニメ『謎解きはディナーのあとで』が4月4日(金)より放送がスタートした。「全国書店員が選んだいちばん! 売りたい本本屋大賞」大賞に輝き、シリーズ累計500万部を突破した東川篤哉の同名小説が原作。根強い原作ファンも多くいる作品で、梶裕貴は宝生家の運転手兼執事・影山役を演じている。
原作への思いも大きいという梶はどのように影山というキャラクターに向き合ったのか。影山の作中での位置づけや、花澤香菜や宮野真守との共演エピソードなどを語ってもらった。
――梶さんは原作を読まれていたそうですね
「はい。原作の第1巻が発売された2010年に、ごく普通の一読者として手に取り、読んでいたんです。だからこそ、今回アニメで影山を演じさせていただけることになったのは、本当に感慨深い出来事でした。当時からテレビCMのナレーションで声がついていたり、その後も朗読やオーディオドラマなどで、さまざまな声優さんが影山に声を当ててこられたわけですが、まさか刊行から15年経って、自分がアニメ版声優として本作に携わることになるとは思っておらず...その驚きと喜びが、本当に大きかったですね」

――原作、そしてアニメを経て本作の魅力については改めてどのように感じましたか?
「影山の淡々とした語り口とは対照的に、麗子や風祭がとてもコミカルで、バラエティ豊かなキャラクター性を持っているので、読んでいて飽きることがないんですよね。なので、ミステリー初心者や普段あまり読書をしない人でも手に取りやすく、身近に感じられる作品になっているという点が大きな魅力だと思います」
――梶さんは普段からミステリー作品をご覧になるんですか?
「意欲的にミステリー作品を読む機会が多いわけではないのですが、お仕事を通して触れることはありますね。これまでの参加作品を振り返ると、厳密にはミステリーではないのですが、『逆転裁判』が印象的です。声を担当した成歩堂龍一も、推理をしながら謎を解きつつ、法廷では難解なセリフを捲し立てるキャラクターでした。それから、西尾維新先生の『クビキリサイクル』も記憶に新しいです。影山とは異なるものの、ほとんど感情が表に出ず、淡々と推理をしていくキャラクター・ぼくの声を担当させていただていたので。自分の中では、影山を含めたこの3人が"個人的推理キャラクター三大巨頭"のような存在。キャラクターに深く入り込んで作品に触れるという経験があったおかげで、ただ謎解きを楽しむだけではなく、"なぜこの人物が推理をしているのか""どんな気持ちで推理しているのか"という部分まで楽しめるようになった気がします。演じるうえでのハードルも確かに感じますが、だからこその、ミステリーの奥深さも体感できたように思いますね」

――影山はすごく淡々としていますが、作中ではかなり重要なキャラクターですよね
「そうなんです。東川先生と対談させていただいた際に、先生ご自身のミステリー作品への思いについてお話を伺って。先生は、ご自身の中に"ハートフルな部分があまりないから、自然と作品にも表れない"とおっしゃっていたのですが、それをお聞きして、影山というキャラクターは、まさにその象徴のような存在だなと感じましたね。限りなくロジカルに、淡々と推理を進めていく。毒舌でもって麗子たちを華麗に弄ぶ様子や、ある種の人間味のなさは、先生ならではのキャラクター設定だったのかと腑に落ちました。名前に"影"とついているように、決して派手な人物像ではないけれど、この作品の屋台骨として、その名の通り"影"の主役として機能している存在なのだろうと思っています」
――そうした影山をどのように役作りをしたうえで挑まれたのでしょうか?
「基本的にアニメにおいては、作品や役に対する自分のアイデアやアイデンティティが少なからずキャラクターに投影される部分があると思うので、演じながらも"共に作っている"という感覚を持つことが多いんです。でも、今回は原作があって、そのうえで制作チームからは「"アニメ版の影山"を生み出してほしい」という明確なゴールが最初から決まっていました。なので、自分の中にいる"原作版の影山"と、どう矛盾させずに、そのゴールへとたどり着くかということを大切にしながら、1クール通して演じさせていただきました。それから、普通は過去のエピソードでの演出や、そこから積み重ねた経験値を基に、"このシーンならこういう音の出し方が適しているだろう"と想定しながら演じていくわけですが、本作にかぎっては、そのセオリーが全く通じず(笑)。登場キャラクターやシチュエーション、ドラマの流れが変わると、求められるものも、その都度異なってくるんです。今回はそういった意味で、実際に現場に入って演出を受けるまで、どんなニュアンスが求められるのか想像がつかないという難しさもありました」

――影山は寡黙そうに見えて喋り始めると饒舌なキャラクターですが、アフレコもかなり大変だったのではないかなと思います
「口数が多いというわけではないのですが、単純に、喋り出したらずっと喋り続けるという感じで、本当にページをめくってもめくっても影山のセリフが続いているような印象がありましたね(笑)。物語としては、1話完結に近いオムニバス形式で、エピソードごとに独立しているので、前半は比較的セリフが少ないものの、後半は影山の推理パートで、一気に喋りっぱなしということが多くて。そこでのセリフ量の多さはもちろんですが、執事ならではの、ものすごく丁寧な言い回しの難しさもありました。あと、限られた尺の中で決まったカットに収めながら話さなければいけないので、技術的にも難易度が高いように感じました。特に僕は、影山を演じる際にトーンを落として抑揚なく喋るよう心がけていたので、そのコントロールに意識を集中せねばならず、そのぶん自由度が下がってしまうんです。抑えたトーンで長く話し続けると、呼吸のリズムが崩れ、酸欠で息苦しくなっていくものなんです。これは声優あるあるだと思うんですけど(笑)。おそらく水泳と同じで、しっかり息を吐き切ることで、次の息をうまく取り込めるんです。けれど、影山の喋り方はロートーン、ローテンションなものがほとんどなので、完全に吐ききれるわけでもなく、しかも、不自然に息を吸うとキャラクター性に違和感が出てしまう。当然、収録後の編集でブレスの部分は切ってくれると思うんですけど、いざ演じている最中に大きく息を吸おうと思うと、「ここで呼吸の間を挟むと影山じゃなくなってしまうな」と無意識に判断してしまうんですよね。本当、本能なんですが。でもそうすると、次のセリフに向けての助走ができていない状態で、また難しいセリフを喋らなくちゃいけない状況に陥ってしまって...(笑)。そういう意味では、技術的な面だけでなく、身体的にも、かなり難易度の高い役だったと言える気がします」

放送情報
『謎解きはディナーのあとで』
全国フジテレビ系“ノイタミナ”にて放送中
詳しくは
こちら
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