青山なぎさが辿る"音楽の原点"「原点や軌跡を意識した一作にしたかった」 Mini Album『Roots』が描く過去と今、そして未来

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Mini Album『Roots』青山なぎさ
Mini Album『Roots』青山なぎさ

──「OAO」を聴いて、青山さんが本当に多彩な音楽性に果敢に挑戦していることが伝わってきました。これまでの作品と比較しても、今回のアルバムでは特にジャンルや表現の幅が大きく広がっていると感じたのですが、ご自身ではこの楽曲にどのような手応えや意図を持っていますか?

「この楽曲では、初めて作詞のコライト(共作)に挑戦させていただきました。今回、作詞は3人で手がけていて、それ以外の曲はすべて私一人で書いているのですが、この『OAO』だけは、3人で一緒に歌詞を考えていくという新しい方法を取り入れました。もともと、いつか一度コライトに挑戦してみたいという気持ちがあって、1stアルバムの時はまず全部自分で頑張ってみようと思って全曲一人で書いたんです。でも、Mini Albumという次の段階に進む中で、新しい考え方や書き方も学んでみたくて、『ぜひ勉強させていただきたいです』と自分からお願いして、今回実現することができました」

――実際に共同で作業をしてみて、新たに得た発見や学びはありましたか?

「ものすごくありましたね。本当にお二人ともプロの作詞家さんなので、いわゆる"音はめ"が本当に巧みで、聞いていて心地よい言葉や響きを集めるセンスが抜群なんです。この曲は、特にサウンドとして"さらっと聴ける"ことを大事にしていて、歌詞の意味を深く考えずに夜のドライブや掃除をしている時など、ふとした瞬間に流してもらえたら嬉しいなと思っています」

──「時が止まればいいのに」は、一聴すると純愛ソングのようにも響きますが、作品全体を見た時にすごく異質な歌詞だなと感じていて。この楽曲にはどんな意図や物語が込められているのでしょうか?

「デジタル配信としてはすでにリリースしていた曲なんですけど、今回アルバムとして7曲続けて聴いた時に、また違った印象で受け取ってもらえたらいいなと思っていました。この曲はかなり前に書いていたものなのですが、実はアルバムの最後に収録した『余韻』という楽曲と繋がりがあるんです。『時が止まればいいのに』と『余韻』は、もともとMVとセットで完結させることも考えていたんですが、今回はシングルではなくアルバムだからこそ、似た系統や雰囲気の楽曲を"連作"のように続けて収録してみるのも面白いかなと思ったんです。そこで、『時が止まればいいのに』の延長線上にある物語として『余韻』という新たな曲を書いて、2曲の関連性を持たせてみました」

──2作には繋がりがあるんですね

「『余韻』は『時が止まればいいのに』のカップルが別れた後の話を描いています。2番の〈改札前 見えなくなるまで手を振った〉が『余韻』では〈駅の改札前 微かに漂う 君の香り〉とつながっていて、細かなリンクを入れました。一見失恋ソングですが、共依存からの別れや喪失感、新しい一歩への葛藤も込めています。曲順もこの流れで聴くことで、ストーリーがより立体的になるように意識したので、ぜひセットで聴いてもらえると嬉しいですね」

――青山さんは前作でも曲順への強いこだわりが印象的でしたが、曲同士のストーリーの繋がりをあえて強調しなかったのは、理由があるのでしょうか?

「物語として曲を続けていない理由は、今回は『歌詞の中に私のルーツが色濃く出ている曲』と、『サウンド面で自分のルーツを表現している曲』がバラバラに混ざっているからなんです。例えば、『OAO』は、歌詞そのものにはあまり私の過去や経験が反映されていなくて、どちらかというとサウンドや雰囲気――私が中学生や小学生の頃に韓国アイドルに夢中だった時期の空気感をイメージしています。曲の雰囲気自体が"あの頃の自分"っぽいな、という感じで、歌詞とサウンドのどちらか一方にルーツを持たせた曲もあれば、両方強く結びついている曲もあるんです。なので、全体でストーリーを作るというよりも、今回は"曲そのものの流れ"や"楽曲ごとの面白さ"を大切にして順番を決めました。それぞれの曲が独立していてもいいし、むしろその方が『こんな側面もあったんだ』と新鮮に感じてもらえるんじゃないかなと。正解はないですが、そういう自由な構成も"面白さ"になると考えて、あえて物語にしばられない並びにしています」

──「MISSION」は、耳に残る独特の疾走感があって、聴けば聴くほどクセになる一曲だと感じました

「これはどちらかというと大学生の頃の自分をイメージして書いた楽曲なんです。大学に入ってから、私はミュージカルサークルとアカペラサークルの両方に所属していて、アカペラサークルでは、リードボーカルとして主旋律を担当しながら、編曲もしていたんです。既存の楽曲をパソコンでアカペラ用にアレンジし直す作業をずっとやっていて、その時に生まれたコーラスパートのフレーズや表現を、この曲でも歌詞の中に活かしたいと思って作った楽曲ですね」

――歌詞の中に登場する〈どぅわりたらら〉というフレーズも、とても印象的でした

「そうですよね(笑)。日本語ではない不思議な言葉をあえて歌詞に入れてみたんです。こういったフレーズは、実際のアップテンポなアカペラ曲のコーラスではよく使われるものなのですが、譜面を書く時は"どぅ"なら"du"や"do"、"わ"なら"wa"とアルファベットで書くんですね。それを日本語の歌詞にそのまま入れてみたら、意外と面白い響きになることに自分でもびっくりして。そんな遊び心や、サークル時代の思い出を詰め込んだ一曲です」

──では最後に、気が早いですが今回の『Roots』を経て、青山さんの中で次に挑戦してみたい音楽や、今後取り組んでみたいテーマなど、すでに思い描いていることがあれば教えてください

「最近もずっと新しい音楽を探していて、常に何か新しいものに触れていたい気持ちがあります。例えば、作家さんと1から直接やり取りをして音楽を作るということもやっていきたいな、と思っています」

Mini Album『Roots』青山なぎさ
Mini Album『Roots』青山なぎさ

取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI

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