これまでたくさんのサクセスストーリーを見てきた私たちは、結末までに状況が変わってマクベスは売れるのではないか?と期待するのだが、なかなかそんな展開にはならない。逆に、奇跡も破滅も起こらないからこそ、マクベスの3人が実在の人物のように思えてくるのだ。脚本の金子茂樹と、菅田とは「3年A組 -今から皆さんは人質です-」でも組んだ福井雄太プロデューサーの「安易な逆転劇にはしない」という覚悟をひしひしと感じる。チートな生き方ができないマクベスの3人や里穂子は、ひたすら不器用で誠実な愛すべき人たち。しかし、彼らだって、あまりに報われない現実に耐えられなくなる瞬間はあり、涙を流すのがなんとも切ない。そんな彼らは、自分のランキングが常に可視化される今の社会でその他大勢として生きる私たちそのものだ。
菅田は映画「火花」などでも芸人を演じてきたが、今回もコント場面などで振り切った演技を見せている。もともとお笑い好きを公言しているとおり、芸人へのリスペクトが随所に感じられ、普段の春斗がナイーブで礼儀正しい青年だというのも、今どきの芸人らしい。春斗がパッとしなかった10年間の芸人生活に友達2人を巻き込んでしまったことに責任を感じ里穂子の言葉に涙する仕草や、瞬太に「お前らと冒険できてよかったよ」と納得したように語る場面では、感情表現の豊かさを発揮。共演機会が多くプライベートでも親友だという仲野や、初めて本格的に組んだ神木とのやりとりはナチュラルで楽しい。マクベスが中古車店で洗車をするシーンや最終話でのじゃんけんのシーンなどは、どこまでが台本にあったもので、どこからがアドリブなのか分からないほど。長回しのカットで、この3人だからこそできたハイレベルな演技をじっくり楽しめる。また、有村架純の珍しい酔っ払い演技にも注目だ。
文=小田慶子
放送情報
コントが始まる
放送日時:2023年1月22日(日)11:00~
チャンネル:ファミリー劇場
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