月組のトップコンビ月城かなと海乃美月の大劇場お披露目公演「今夜、ロマンス劇場で」

月城かなと
月城かなと

時は1964年、映画が大好きな健司は映画館「ロマンス劇場」に通い詰め、古いモノクロ映画を飽きることなく見ていた。その映画フィルムが売りに出されることが決まったある日、映画の中のお転婆なお姫様、美雪がこちらの世界にやって来てしまう...。

海乃美月
海乃美月

原作/映画「今夜、ロマンス劇場で」(c)2018 フジテレビジョン ホリプロ 電通 KDDI ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

宝塚大劇場お披露目公演「今夜、ロマンス劇場で」は、2018年に公開された同名の映画の舞台化で、映画では健司を坂口健太郎が、美雪を綾瀬はるかが演じた。タカラヅカ版の脚本・演出を担当するのは、映画の舞台化に定評があり、2023年も『鴛鴦歌合戦』の脚本・演出を手がける小柳奈穂子だ。

2021年に月組の新トップスターに就任した月城かなとは、その端正な容貌と、人間味溢れるお芝居が共に魅力的な男役スターだ。どちらかというとアダルトな役柄を演じることが多かった月城にとって、健司役は新鮮な役どころ。素朴で誠実な人柄に、美雪にとっての「王子様」らしさも加わり、タカラヅカの男役として豊かな経験を積んできた月城だから創り上げられる健司だった。映画では加藤剛が演じていた晩年の場面を、タカラヅカ版では月城が通しで演じるのも注目だ。

対する美雪を演じる海乃美月は、ノーブルな雰囲気が魅力の娘役だ。月城とはトップ就任前に、『THE LAST PARTY』『Anna Karenina』と2作を経たトップコンビだけに、息のあったお芝居を安心して見ていられる。パワフルな美雪もタカラヅカの娘役としては挑戦の役どころだが、圧倒的なお姫様感は流石で、どの衣装の着こなしも美しい。

大スター・俊藤龍之介(鳳月杏)の強烈なキャラクターは映画版に負けず突き抜けているが、健司とのやりとりでホロリとさせられる場面も。俊藤たちが挑戦する「妖怪ミュージカル」がやけにスタイリッシュなのもご愛嬌だ。ちなみに、1964年といえば日本初のブロードウェイミュージカル『マイ・フェア・レディ』が初演されて大評判を呼んだ翌年であり、「何でもかんでもミュージカル仕立てにしてしまおう」という話もいかにもありそうな時代である。

 鳳月杏
鳳月杏

原作/映画「今夜、ロマンス劇場で」(c)2018 フジテレビジョン ホリプロ 電通 KDDI ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

この他、美雪がいた映画の中の世界がしっかり描かれているのも、タカラヅカ版ならではの見どころだ。美雪への愛をめぐって健司と争う「ライバル」として、大蛇丸(おろちまる・暁千星)も登場する。おどろおどろしい存在かと思いきや、指先の動きもユーモラスで、意外とチャーミングな敵役だ。

原作映画ではスクリーンの中にしか出てこない狸吉(蓮つかさ)・虎衛門(英かおと)・鳩三郎(柊木絢斗)の「三獣士」が現実世界にまでやってきて右往左往するのも可愛らしい。

健司の友人にしてライバルの伸太郎(風間柚乃)には「実家が豆腐屋」という設定が加わったが、彼なら映画産業が斜陽化しても家業で大成功したに違いないと感じさせてくれる熱い男である。社長令嬢の塔子(彩みちる)とのその後も気になるところだ。

映画で印象的だったラストシーンも、タカラヅカらしい見どころとなっている。スクリーンのモノクロ映像がカラフルになっていく。そして、その光景が舞台上に現れた瞬間には目を見張る。
 
原作映画のノスタルジックな雰囲気を残しつつ、タカラヅカらしい見どころも随所に散りばめられている。観終わった後にじわじわと広がる温かい余韻を、スカイ・ステージでも味わいたい。

文=中本千晶

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放送情報

今夜、ロマンス劇場で
放送日時: 2023年2月5日(日)21:00~ほか
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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