安田顕が普通の男を演じながらも圧巻の芝居で胸を打つ...映画「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」

(C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会

中でも、主演を務める安田の芝居は圧巻。安田演じる主人公のサトシは、精神的に少々幼さのあるマザコン気質のキャラクターではあるが、(実話を基にしているため当たり前なのだが)基本的にごく普通の男性で、演じる側としてはかなりハードルが高い。というのも、どこにでもいる普通の男性を演じながら、観る者の気を引き続ける「吸引力」を纏い続けなければならないからだ。

(C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会

しかし安田は、母との何気ないシーンにおける照れ隠しからくる邪険な対応や、母の病気を受け入れられないさま、1人では処理できない事柄に直面してキャパオーバーしてしまう瞬間など、普通の人の「普通でない状態」を人間味あふれる演技で表現することにより、「吸引力」を発生させ続けている。

特に、泣きの芝居は筆舌に尽くしがたいほど素晴らしい。作中、泣きのシーンは1度ではなく何度も訪れるのだが、その全てにおいてバリエーションが違う。土台となる「悲しみ」や「切なさ」は変わらないのだが、その配合と場面場面で異なる感情というスパイスによって千態万状に形を変えている。そんな芝居を体現できるのも、同じシチュエーションなどない瞬間瞬間を、役として生きているからだろう。

(C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会

安田が演じる「普通の男」の、誰もが必ず経験することでありながら「普通ではない事態」である「大切な人の死」との向き合い方に心を揺さぶられながら、安田が発する吸引力の源にも注目してほしい。

文=原田健

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放送情報

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。
放送日時:2023年2月16日(木)21:25~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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