宙組・鷹翔千空が初主演を務め、その魅力を存分に発揮したバウホール公演「夢現の先に」

鷹翔千空
鷹翔千空

本年1月に宝塚バウホールにて上演された宙組公演「夢現の先に」。宙組・鷹翔千空の初主演作、そして、演出家・生駒怜子の宝塚バウホールデビュー作ということで注目された舞台だ。

物語は、「僕」と「彼」そして「彼女」を中心に進んでいく。毎晩、悪夢にうなされ続けている「僕」は、ある日、夢の中で「彼」に出会う。「彼」にいざなわれるままに向かった世界には、「僕」が現実世界で密かに憧れている「彼女」もいた。
 
「僕」は「彼」とその仲間たちに、「彼女」との距離を縮めるための指南を受けることになる。これが功を奏し、やがて「僕」の現実世界も変わっていった。「彼」とはいったい誰なのか? 「僕」は知りたいと思うのだが...。
 
1幕は、いわば夢の中での「恋のレッスン」の話であり、思わず胸がキュンとする場面の連続である。だが、2幕で雰囲気は一転し、「彼」の思いがけない秘密が明らかにされていく。

本作が初主演となる鷹翔千空は、目下、宙組でめきめきと頭角を現してきている注目のスターである。2018年、「天は赤い河のほとり」のカイル役で新人公演初主演、2019年「オーシャンズ11」のダニー・オーシャン役でも主演した(いずれも本役は真風涼帆)。2019年バウホール公演「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」では、主人公を陥れていくパーシー役を好演。2022年「HiGH&LOW-THE PREQUEL-」 では原作でも人気の高い村山良樹役で凄みを感じさせた。
 
また、本年夏に上演が予定されている「大逆転裁判」では、ゲームの中の重要なキャラクターであるシャーロック・ホームズ役を演じる。二枚目男役でありつつ、独特の個性的な雰囲気も併せ持っているところが魅力のスターである。

本作は、そんな鷹翔の持ち味が存分に発揮された作品といえるだろう。どこにでもいそうなシャイな「僕」だが、人間味にあふれ、生真面目に奮闘を重ねる姿を見て、思わず「がんばれ!」と応援したくなる。自分の殻がなかなか破れない悩みは誰にでもあるものだ。その意味で「僕」は普遍的な「僕」なのだ。だから、誰もが応援したくなるのかもしれない。

亜音有星が演じる「彼」も、天真爛漫な明るさの背後に影を感じさせる役どころで、「光あるところに闇はある」という言葉を思い出させるハマり役だ。山吹ひばり演じる「彼女」は「僕」を引っ張っていくところもあるしっかり者の女の子である。「彼女」はいわば、きらめく現実世界の象徴だろう。

この他、「彼女」に密かに想いを寄せる店員フランク(大路りせ)、若者たちの恋路を温かく見守る花屋の店長トーマス(秋奈るい)、夢の世界で「彼」の背中を押す羊のメロ(泉堂成)など、チャーミングなキャラクターたちが多数登場する。

花屋を舞台とした「現実世界」は、カラフルな色にあふれる世界として表現され、対する「夢の世界」は、モノトーンで表現されるのも印象的だ。「彼女」と共に生きていける「現実世界」は輝きに満ちあふれている。でも、「彼」が生きる「夢の世界」に逃げ込むことも、時には人間には必要なのだ。そんなことも考えさせられる作品である。

文=中本千晶

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放送情報

夢現の先に
放送日時:7月8日(土)23:00~ほか
放送チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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