実写版「ひぐらしのなく頃に」で前田公輝飛鳥凛松山愛里らが与えたもの

(C)2008竜騎士07/オヤシロさまプロジェクト

主人公の圭一が意図せず連続怪死・失踪事件について知ってしまったことで、事件に巻き込まれていくという展開で、"事件は村人たちによるものなのか、それとも呪いなのか"という部分が同作の核となっている。魅音やレナの怪しい言動や後半に見せるギャップ、そしてそれらによって圭一の不信感から恐怖へ変わり、半狂していく反応がホラーサスペンスの醍醐味の礎となっている。しかし今回は、あえて作品の前半に目を向けてみたい。

"怖さ"や"ゾクゾク感"というものは、物語の前段で平和で楽しい雰囲気であればあるほど落差が生まれ、その効果を倍増させる。いわば前振りが重要なのだ。さらに、"楽しさ"だけでなく、その部分でキャラクターたちの人柄で性格、関係性、背景、抱えているものや悩みを描くことで、人間ドラマの要素を濃くし、作品に厚みを帯びさせていくことが肝要。ただの少年少女が、よく分からない異形のものに襲われるだけだと薄っぺらくなってしまい"怖さ"も引き出せない。例えば、異形のものでも「こういう無念があって非業の死を遂げた」という理由づけされることによって、切なさだったり執着の強さを描写できるし、観る者の"怖さ"も増幅させることができる。

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同作においても、前段となる圭一が連続怪死・失踪事件について知ってしまうまでが素晴らしい。都会から田舎に引っ越してきた拗ねた様子の圭一、そんな圭一を明るく迎える魅音やレナたち、周りの温かさに触れて心を開いていく圭一、仲の良い幸せな日々をすごす3人など、前田ら3人がそれぞれの役をフレッシュに瑞々しく演じている。つまり前段では、彼らの繊細で等身大の演技によってしっかりとした青春群像劇となっているのだ。

だからこそ、ホラーサスペンス部分が怖い。あの仲の良かった3人の関係性が不信感に飲み込まれていく不気味さ、恋愛が始まりそうなくらい親しかった人の変貌による恐怖感など、深みのある恐怖を生み出している。当時若手俳優だった3人のフレッシュで瑞々しい演技をしっかり堪能した上で、メインディッシュとなる落差の大きい恐怖感を味わってみてはいかがだろうか。

文=原田健

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放送情報

ひぐらしのなく頃に
放送日時: 2023年8月6日(日)20:00~
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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