胸キュン必至のラブコメから痛快アクション時代劇、感動のヒューマンドラマや骨太のミステリーなど、さまざまなジャンルの作品で圧倒的な存在感を放ち、日本を代表する俳優の1人として活躍している佐藤健。彼の卓越した身体能力とコメディセンスが発揮された作品として知られるのが、2014年放送のTVドラマシリーズ「ビター・ブラッド~最悪で最強の親子刑事~」だ。
佐原夏輝(佐藤)は、銀座署の新人刑事。出勤初日に職場へ向かう途中、老女を狙ったひったくり現場に遭遇する。逃げた犯人の男と揉み合いになる夏輝だが、そこに突然現れた女性が犯人の男を華麗に投げ飛ばす。それは、偶然通りかかった新人刑事・前田瞳(忽那汐里)だった。2人が配属された銀座署刑事課捜査第一係・鍵山班には、班長の鍵山謙介(高橋克実)以下、尾行の達人・稲木俊文(吹越満)、結婚願望の強い独身・古雅久志(田中哲司)、口臭が武器になる富樫薫(皆川猿時)、刑事ドラマオタクであだ名付けの達人・鷹野浩次(KEIJI(EXILE))、そして夏輝の実父・島尾明村(渡部篤郎)がいた。
幼い頃に両親が離婚して以来、明村とは犬猿の仲だった夏輝は、父との再会に頭を抱えるが、鍵山は明村を夏輝の指導係に任命し、2人は親子でバディを組むことになる。
本作で佐藤が演じる夏輝は、とにかく真っ直ぐで正義感の強い性格。遅刻ギリギリでの自転車通勤の中、鉄道の踏切で転んで泣いている幼稚園児を助け起こし、その母親が陣痛をもよおせば、一緒に救急車に乗り、その手を握りながらサポートする。そしてひったくり現場に遭遇した際には、被害者の老婆を助け起こした後、全速力で犯人を追いかける。そうこうしているうちに初出勤にもかかわらず大遅刻してしまうという、自分よりも他人のことを優先するタイプなのだ。そんな夏輝を、佐藤は持ち前の爽やかな笑顔と誠実な雰囲気を最大限に発揮して好演。中でも、ひったくり犯を追いかけて銀座の街を駆け抜けるシーンで披露する俊足や、殺人事件の容疑者となった男の遺族への事情聴取中に思わず感情移入してしまい涙をこぼすシーンでは、佐藤の体当たりの演技が夏輝という人物に確かな体温を与えている。
実の父でもある明村や、部署内の先輩たちと飲みに行った帰り、ぼったくりバーで身ぐるみをはがされている男性を見かけた時には、「管轄外だ」と釘を刺されても「困っている人を見過ごせない」と身を挺して庇うなど、優しく真面目な顔をみせる夏輝だが、父である明村や、唯一の同期の瞳、そして妹の忍(広瀬すず)の前では自分の感情を素直に表現。特にバディでもある父・明村に対しては、落ち着いた表情や細やかな視線の演技から、夏輝が父に対して抱くわだかまりやなかなか壊すことのできない心の壁がひしひしと伝わってくる。
夏輝と明村の関係を軸に、個性的な刑事たちが難事件を解決するさまを描く本作だが、コメディ作品としても秀逸。第8話「密室大パニック!!」では、署内に侵入した凶悪犯がビル内の電源を落としたことから、エレベーターという密室に閉じ込められた夏輝と明村が、酸素不足や暑さ、そして襲い来る尿意と戦う、抱腹絶倒のエピソードが展開。そこでの渡部と佐藤のリズミカルな掛け合いは要注目だ。
犯人との格闘など、佐藤の真骨頂とも言えるアクションシーンも存分に楽しめる痛快バディアクション。佐原夏輝という1人の青年の成長を全11話構成のドラマの中でしっかりと表現した、佐藤健という役者の実力が最大限に味わえる一作だ。
文=中村実香
放送情報
ビター・ブラッド~最悪で最強の親子刑事~ 一挙放送
放送日時:2023年10月15日(日)10:55~
チャンネル:ファミリー劇場
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