本作での綾野と武井は、その演技力で、物語の当初からそれぞれの人物像を強く印象付けてくれる。大学の一室での会話で、創平が固い口調で淀みなく知識を並べていくさまは、知的な研究者といった雰囲気だ。創平が極地環境研究センターへ行くとなった時にすぐさまついていこうとし、「先生と一緒にいられるんだったらなんだっていいんです」とあっけらかんと語る萌絵は、若さと愛らしさに満ちている。
創平と萌絵のスーパー理系&師弟コンビが事件に巻き込まれ、事実を分析し、論理的思考によって真実を突き止めていくところに、これまでのミステリーとは一線を画す面白さがある。また、まったく性格が違う2人のユニークなやり取りも、このドラマの魅力の1つと言えるだろう。
やがて、2人が訪れた極地環境研究センターで、最初の事件が起こる。実験室から通じる2つの部屋に1人ずつ、つまり計2人の遺体が発見されるのだ。密室となっていた部屋を見回す創平の眼差しは鋭く、観察眼と分析力が鋭敏になっている様子が伝わってくる。一方の萌絵は、駆けつけた刑事に自らの推理を披露して見せる。所内の見取り図が表示されたシーンで、少し遠い目で淡々と語る様子は、思考をフル回転させているかのようだ。
2人が試行錯誤を重ねながら謎を解き明かしていく過程に釘付けになり、ラストの意外な事実に驚愕する。重厚でありながら二転三転する物語に自然に入り込めてしまうのは、個性際立つ創平と萌絵という人物の魅力を、綾野と武井が十二分に引き出しているからだろう。
第2話で犯人が自ら命を断った後の、言葉にならない萌絵の口の動き。第6話で「その答えを出さなければならない」とつぶやいた時の創平の尋常でない眼差し。そういった迫真の演技はもちろん、第7話では萌絵が戦隊系ヒロインのコスプレをするなど、2人のさまざまな心情や姿を、綾野と武井はその演技力で魅せてくれる。
物語はそれぞれの事件を解明しつつ、全編を通しての重要な人物・工学博士であり天才プログラマーの真賀田四季や、萌絵が抱えている心の問題などが絡み合いながら進行していく。スーパー理系の師弟コンビを、果たしてどんなラストが待っているのか、最後まで目が離せない1作だ。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
すべてがFになる 一挙放送
放送日時:2024年1月27日(土)11:35~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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