若き柴田恭兵能瀬慶子のカップルが体当たりで演じた昭和の名作「赤い嵐」

本作の魅力は、ホリプロスカウトキャラバンで優勝し、前年に芸能界デビューした能瀬慶子の初々しさと、本格的な主演作はこれが初となる柴田恭兵の力強さに尽きる。本格的な演技の経験に乏しかったこともあるが、能瀬が演じる「しのぶ」役は過去に秘密を持つ記憶喪失の少女という難しい役どころ。純朴で清楚な人柄だが、時々過去の記憶が蘇ると「うるせぇ、ババァ!」などと荒っぽい口調に人格が一変。過去の自分の姿に怯える姿が特徴的で、後年にも芸人などに物まねされることが多かった。

相手役の柴田恭兵も素晴らしく、画面いっぱいに広がる彼の凛々しさと爽やかさは現代のイケメン俳優を凌駕するものがある。本作のテーマは、「人間が愛を持っている限り、愛のために徹底的に生きる限り、決して不幸にはならない」という重厚なもの。哀れな娘に愛を感じる男と、心優しい青年に愛情を覚える女。そんな彼女の過去の秘密が暴かれた時に、2人の愛はどうなってしまうのか...。娘の正体に不安を抱きながらも、記憶を取り戻すために必死の努力を続ける真。大映テレビお得意の「記憶喪失」を核として、ミステリアスな悲しみと恐怖にあふれた愛の物語が展開する「赤い嵐」。純愛サスペンスの極致ともいうべき本作は、紛れもない昭和を代表する名作ドラマのひとつである。
ちなみに能瀬慶子は、歌手としても「アテンション・プリーズ」などシングル4作をリリースしているが、同曲をはじめアルバムに5曲を提供しているのが、今や大物アーティストとなった浜田省吾である。当時は浜田がホリプロに所属していたため、同事務所の歌手に楽曲提供したことがあった。「アテンション・プリーズ」は、おそらく浜田が他人に提供した楽曲としては最も有名で、「浜省節」が全開の名曲としてファンの間でよく知られている。

本作での能瀬慶子は、記憶を取り戻す過程で派手な衣装とかつらを身にまとい、夜の街で働く場面など、まさに体当たりで演じている。過剰なモノマネでネタにされたこともあったが、大いに見る価値のある作品であることは疑いない。劇中で何度も語られる「俺たちの合言葉は、勇気と前進!」という、真の力強い決め台詞は、きっと現代の視聴者にも力強いメッセージとなるだろう。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

赤い嵐
放送日時:4月15日(月)18:00~
放送チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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