謎の男・ジョージ白州を追う入江の動向を軸に、京大空手部の仲間で現在は新聞記者をしている友田勇夫(神田正輝)、入江が懇意にしている元祇園の芸妓・千野しのぶ(十朱幸代)とその娘・秀子(藤原紀香)、北山の元上司で、現在は研究所の専務となった江波和也(小林稔侍)らが絡み、ストーリーは複雑に展開する。ほかにも秀子の実の父親の謎などシークエンスが散りばめられているが、決して散らかることなく、後半に向けて緻密に紡ぎあげているのは、さすがに名人・倉本聰の見事な筆さばきといえるだろう。
さらに本作の魅力は、やはり複雑な人物設定である主人公・北山を演じる渡哲也の演技の素晴らしさだ。抑制した芝居で、過剰になることなく難しい役どころをこなしているが、脚本の理解力の高さを伺わせるような役者としての「勘の良さ」を感じさせる。青山学院大学空手部の出身で、アクション路線で売り出したこともあり、肉体派俳優の印象が強い渡だが、若い頃から演技力には定評があった。倉本聰とは、日本テレビ系「大都会」シリーズでも組んでおり、相性の良さを本作でも存分に発揮している。
共演陣では、舘ひろしが誠実極まる実直な男・入江を好演。いわゆる狂言回しの役どころで、舘の個性とは真逆とも思える人物を地道に演じている。小林稔侍も悪役的な立場である江波を独特の芝居で演じており、こちらも絶品だ。ヒロイン・秀子を演じる藤原紀香は、当時30代で美しさが際立っている。スタイルが良く画面映えが抜群で、視聴者をくぎ付けにするほどの絶大な存在感を放っているが、特に結婚式の場面が印象深い。ほかに、石原プロモーション所属(当時)の徳重聡、「太陽にほえろ!」(日本テレビ系)出身で石原プロと縁が深い勝野洋、「弟」にも小林専務役で出演した東幹久、「あぶない刑事」(日本テレビ系)で舘ひろしと共演した仲村トオルらが顔をそろえている。
実力派の俳優陣が顔をそろえ、京都の風景も楽しめる大作「祇園囃子」は、倉本聰の筆致が冴える一大サスペンスストーリーを、渡哲也ら豪華キャストの演技で堪能できる見ごたえ抜群の一作だ。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
ドラマスペシャル 祇園囃子
放送日時:5月18日(土)19:00~
放送チャンネル:テレ朝チャンネル2
※放送スケジュールは変更になる場合があります
詳しくはこちら