映画を観てなによりも驚くのは、やはり吉永のキュートさだろう。牧師・荻生直文(寺尾聰)にピュアな恋心を抱いている福江の瞳はキラキラとしていて、その真っ直ぐな想いがスクリーン越しにもひしひしと伝わってきて、甘酸っぱい気持ちになった。年齢を重ねてなお、瑞々しく、透明感あふれる演技を見せる吉永。一方で、息子の前で見せる母の顔は優しく温かくて、よき日本の母という言葉がピッタリの懐の深さを感じさせる。だからこそ、クライマックスで福江が息子にぶつける本音が、苦しいほどに胸を打つ。吉永小百合が生み出した福江というキャラクターは、最初から最後まで、ひたすらに魅力的なのだ。さまざまな表情を発見し、彼女の俳優としての凄みをたっぷりと感じることができた。
もちろん、大泉の素晴らしさにも言及せずにはいられない。悩んだり、怒ったり、本作で見られる、大泉の人間味溢れる芝居はやはり最高である。コメディーも得意としている彼だが、人間の抱える孤独や悲哀を表現するのもまた、抜群にうまい。昭夫はある種どこにでもいる会社員なのだが、リアリティーの詰まった細やかな芝居によって、昭夫というキャラクターに愛おしさを感じずにはいられなかった。大泉という俳優の吸引力から逃れる術はないのだ。
偉大な俳優たちが名監督・山田洋次と紡ぐ物語。令和を舞台にしながらも、どこかノスタルジックな情緒を感じることができ、見終わった後には温かな感動で包まれることだろう。吉永、大泉が親子を演じ、日本映画史に残るこの感動作に、ぜひゆっくりと浸ってもらいたい。
文=鳥取えり
放送情報【スカパー!】
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放送日時:6月6日(木)08:30~
放送チャンネル:衛星劇場
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