平岡祐太が主演の新・浅見光彦シリーズ第一作「漂泊の楽人 越後~沼津・哀しき殺人者」

ルポライターの浅見光彦(平岡祐太)は、「角兵衛獅子」発祥の地である新潟県の月潟村(新潟市月潟地区)を訪れた。そこで大学時代の同級生である漆原宏(永岡佑)に偶然出会う。静岡県沼津市出身の宏が何故新潟にいるのかを訊ねると、調べ物だという。なぜか宏は光彦に「もし俺に何かあったら、おふくろと妹を頼めないか」と不吉な言葉を言い残す。そして数日後、宏の妹・肇子(相楽樹)が浅見家を訪れる。肇子は宏が自殺したことを知らされたという。しかし肇子は自殺だとする警察の判断に不信を抱き、「何かあったら浅見に頼め」という兄の言いつけ通りに東京の光彦の元へやってきたのだった。光彦は肇子と沼津へ向かい、担当刑事・二宮(岡田浩暉)に事情を聞く。二宮は就職が決まらないことに悩んだ宏が、無断借用したクルーザーで自殺を図ったと言うのだが、光彦は腑に落ちない。そんな中、光彦は肇子から母・睦子(原日出子)が失踪したとの知らせを受ける。睦子宛に届いた月潟村からの手紙を頼りに、肇子とともに新潟へ向かう光彦は、複雑に絡んだ過去の因縁という糸を紐解いていくが...。

原作小説が有名であり、過去に多くの名優たちが演じてきた光彦役だけに、平岡にとってはプレッシャーも大きかったことだろう。初回放送時には「今回のオファーに尻込みしてしまうところもありましたが、原作や台本を読んでいくうちに、人に寄り添い、気高く生きる浅見光彦の人柄に惹かれていきました。事件の背景にある、人の物語が詰まったこの作品を噛み締め、監督やスタッフ、共演者の方々にお力をお借りし、浅見光彦の世界をお届けしたいです」と語っていた。本作での平岡は、パブリックイメージに反しない正統派の光彦をうまく表現しており、好演しているという印象。2002年に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」グランプリを受賞して俳優デビューした平岡は、2005年に映画「スウィングガールズ」にて日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、演技力には定評があり、光彦役という大役も見事にこなしている。特に友人である宏が悪事に巻き込まれて苦悩のうちに殺されるに至った無念さに想いを寄せ、犯人への憎悪をにじませて執念深く追い詰めていく感情の動きの演技は圧巻。ヒロインの肇子を演じた相楽樹のひたむきな演技も印象的だった。竹下景子、石丸幹二らベテラン陣も味わい深いが、原日出子や村井國夫の安定感のある演技が画面を引き締めている。また、本作では今は亡き上島竜兵が静岡県警の畑山警部役で出演している。ドラマでも渋いわき役として活躍してくれた彼の元気な姿が見られることも嬉しい。

過去にも何度かドラマ化されたことがある有名な原作だが、時代背景などでアレンジされた場面などもあるので、見比べるのも楽しいはず。重厚な人間ドラマとしても見ごたえがあり、新潟や静岡の風景などトラベルミステリーならではの旅情も楽しめる。平岡の感情表現が光る本作は浅見光彦シリーズのファンはもちろん、ミステリードラマ好きならぜひ抑えておきたい。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

新・浅見光彦シリーズ「漂泊の楽人 越後~沼津・哀しき殺人者」(平岡祐太主演)
放送日時:6月6日(木)7:00~
放送チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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